多数の車輪で不整地もOK! 愛称「ムカデ」の輸送機 Ar.232が幻の傑作機になったワケ

整備されていない飛行場でも離着陸できるようにするにはどうするか。その課題をクリアするために異例の、多数の車輪を持つ輸送機が作られたことがあります。性能は良好だったのにほとんど生産されなかったのはなぜでしょう。

新興企業が設計したとは思えないほど完成度の高い飛行機

 重機や建機など、大型機械を運搬するための重量物用トレーラーには、車輪の数を増やして接地圧を分散させる構造のものが多く見られます。これと同じ発想で、不整地でも離着陸できるよう多数の車輪を胴体下部に装備した輸送機を、第2次世界大戦中のドイツが開発していました。当時、新興の航空機メーカーだったアラドのAr.232がそれです。

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試験飛行中のAr.232輸送機。胴体下部に多数の小直径車輪が並んでいるのがわかる。

 そもそも同機は、第2次世界大戦勃発直後の1939(昭和14)年末に、ドイツ空軍向けの新型輸送機として設計されます。アラドは、輸送機のような大型機の開発は未経験でしたが、それゆえに固定概念に縛られることなく実用性を重視した設計を行うことができました。

 たとえば主翼は胴体の高い位置に付く、いわゆる高翼配置にして、着陸時に胴体下部と地面の高低差が少なくなるようになっていました。さらに胴体は限りなく箱型で、後部に油圧開閉式の扉を設けて火砲や車両の積み下ろしが容易な形状とするなど、現代の輸送機でも見られる構造を先んじて取り入れていたのです。

 しかも、Ar.232の先進性はそれだけではありませんでした。通常の主翼および機首から下がる3点式の主脚のほかに、胴体底部に多数の小直径車輪を用いた降着装置を備えていました。車輪の数は22個、2列11組の小さなゴムタイヤがあることで、整地されていない前線の応急飛行場のようなところでも、離着陸できる能力を備えていました。

 また主翼後縁の可動翼(フラップ)の形状を工夫することで、短距離離着陸性能も優れており、滑走距離200m程度で離陸することも可能でした。

【写真】飛行機の心臓であるエンジン数を変えたAr.232B

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