始まりは「商売人のツケ回収」!? 鉄道の「終夜運転」歴史は意外と古かった 実は大晦日以外にも

山手線の「毎日終夜運転」計画とは

 ところで終夜運転には、ニューヨーク地下鉄で行われるような日常的なものもあります。実は1928(昭和3)年の終夜運転で国鉄は、どのような乗客が何の目的で利用しているのか、「将来運転上の参考」のために東京駅を始めとする各駅で乗客数を実地調査しています。

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24時間運転を行うニューヨーク地下鉄(画像:写真AC)。

 当時の山手線はそもそも今よりも運転時間が長く、終電が深夜1時半から2時頃、初電は4時から4時半ごろだったため、これをつなげて恒常的に終夜運転を行おうという構想がありました。調査の結果、利用者が余りにも少なく、採算がとれないので終夜運転計画は中止すると伝えています。

 その後もバブル期や、2010年代の猪瀬都知事(当時)など、山手線や地下鉄の「24時間化」は度々提起されていますが、コロナ以降、目に見えて深夜の利用者が減少し、終電の繰り上げが進む今となっては、もはや誰も口にしなくなりました。

 結局、終夜運転は大きな需要が存在するか、あるいは需要を自ら作り出さなければ成立しないサービスであり、一方で賞味期限はそれほど長くないものなのかもしれません。

※参考文献:鉄道が変えた社寺参詣(交通新聞社)平山昇(2012年)

【了】

【画像】ヤバイ…! これが「終戦直後の通勤風景」です

テーマ特集「【記事まとめ】昔の鉄道風景は驚きだらけ!? あの路線の意外な歴史、幻に消えた鉄道計画も…知るほど奥深い「鉄道考古学」の世界」へ

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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