「黒海封鎖」は正しい表現か “ウ側の船は敵”宣告のロシア 実は「封鎖」できていない?

ロシアによる措置は「封鎖」なのか

 国際法上、「封鎖(blockade)」とは「敵の領土内にある、あるいは敵が占領(管理)している沿岸部や港、空港へのすべての船舶や航空機の入港、あるいは出港を防止する軍事行動」をいうとされています。その目的は、敵の補給路を断つことにあり、言い方を変えれば「兵糧攻め」ということになります。この封鎖を破ろうとする船舶(封鎖侵破船)は、その積み荷や船籍を問わず、拿捕および没収の対象となります。

 古く16世紀末にはすでに海上戦の手法の一環として認識されていたこの封鎖は、19世紀半ばから20世紀初頭にかけてこれを規制する国際条約も誕生しています。第1次および第2次世界大戦を経て、2023年現在でも封鎖の措置は各種の武力紛争でとられてきています。しかし、単に海上交通を遮断したからといって、それが封鎖にあたるとはいえません。

 まず、封鎖を行えるのは敵国の領水、その先の公海、および排他的経済水域(EEZ)に限られています。また、封鎖は船舶の航行を防止するに足りる兵力(水上艦艇)により実効的に行われる必要がある(実効性要件)ほか、封鎖を行うという宣言および他国への通告が必要とされています(宣言告知要件)。

ロシアの行為はどう評価される?

 それでは、今回のロシアの行為はどのように評価されるのでしょうか。まず、これが封鎖にあたるかどうかですが、たしかにロシアは黒海艦隊により実効的な措置をとれる可能性はあります。しかし、ロシアはこれを「封鎖」とは表現しておらず、加えて今回の行為の目的も、ウクライナの補給を断つというより、むしろ国際社会からの譲歩を得るための威嚇に思えます。従って、これは法的な意味における封鎖とはいえないでしょう。

【写真】黒海を行くアメリカ駆逐艦

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