「黒海封鎖」は正しい表現か “ウ側の船は敵”宣告のロシア 実は「封鎖」できていない?

ロシアが黒海において、ウクライナの港へ向かうすべての船舶を敵とみなすという、西側諸国から見れば事実上の「黒海封鎖」を強行しています。しかしこの「封鎖」という言葉は、正しい使い方ではないかもしれません。

ロシアの“意味深な一文”の真意は

 では、ほかにどのような説明が可能かというと、ひとつは「排除水域(exclusion zone)」が考えられます。排除水域は、軍事的な必要性から一定の海域で民間船舶などの航行を制限するもので、もともと第1次および第2次世界大戦時に生み出されました。比較的最近では、1980(昭和55)年に始まったイラン・イラク戦争や、1982(昭和57)年のフォークランド紛争などでこうした水域が設定されています。

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ルーマニア沖の黒海で見つかった機雷を処理するルーマニア海軍。触角(トゲ)にキャップがついたままで爆発しない状態になっている(画像:ルーマニア国防省)。

 ただし、この排除水域において、そこに入ってきたからといって民間船舶を無差別に攻撃できるわけではなく、たとえば敵の戦争遂行努力に資するような行動をとっている場合など、きわめて限定的な場合に限られています。今回のロシアの声明にある「ウクライナの港に向かうために黒海を航行するすべての船舶は、軍事目的の物資を積み込んでいるものとみなす」という一文は、まさにこのような理由から攻撃の可能性を示唆するために盛り込まれたのではないかと、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

 しかし、これはロシアが一方的に主張しているにすぎず、単にウクライナに向かって航行しているからといって、その船舶が戦争遂行努力にあたっているとみなすことは困難でしょう。ロシアが、国際法に従って適切な行動をとることを切に願うばかりです。

【了】

【写真】黒海を行くアメリカ駆逐艦

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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