「あ、元京王だ!」も30年以上 京王帝都5000系は何がスゴイのか 地味・遅いのイメージ払拭
「京王ライナー」などで活躍する京王電鉄5000系。実はこの5000系は2代目です。初代はロングシートの通勤形電車として日本で初めて冷房を搭載した車両。現在も地方鉄道で活躍している5000系(初代)について振り返ります。
国鉄よりも7年早い冷房通勤車
京王帝都電鉄(現・京王電鉄)の5000系電車(初代)は、1963(昭和38)年に登場した通勤電車で、いまも譲渡車が地方の鉄道で走っています。この5000系は、同社の歴史においてもひとつの画期となった車両です。同社は1960年代、増え続ける利用客に対応すべく、本格的な都市鉄道に変化しようとしていました。
前身である玉南電気鉄道が開業した1925(大正14)年は、車体長14mの路面電車のような車両が主力でしたが、1948(昭和23)年に京王帝都電鉄が発足してからは、車体長16mの2600系電車が投入されました。1953(昭和28)年には軽量17m車体の2700系電車を、1957(昭和32)年にはカルダン駆動の新性能車両2000系電車投入と、着実に大型化・高性能化が進んでいたのです。
こうした中、京王は1962(昭和37)年、沿線利用者にアンケート調査を行います。その結果、「地味」「電車が遅い」といったネガティブな評価が数多く寄せられました。
当時、京王は新宿に地下駅を作り、百貨店経営にも乗り出したタイミングでした。このため、従来からの京王電車のイメージを脱却した新型車両による特急運転を考えていたのです。
こうして開発されたのが、5000系(初代)電車でした。当初は2扉クロスシートの特急専用車両とすることも検討されましたが、ラッシュ時に運用できないこともあり、車体長18mの3扉ロングシート車として製造されます。
5000系のうち5717・5718編成は、ロングシート車両初の冷房通勤車でした。国鉄山手線ですら初めて冷房車が走ったのは1970(昭和45)年ですから、国鉄より7年も早い画期的な出来事でした。しかし通勤形電車への冷房搭載の前例がなかったため、冷房能力は定員の2倍までが想定されました。
クリーム色の車体に赤帯が引かれた5000系は、前頭部の前面ガラスに曲線ガラスを使用していました。この「低窓パノラミックウィンドウ」は、営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線の3000系電車以外では当時採用例がなかった優美なもので、運転席越しの展望性も抜群でした。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は現役時代の5000系特急に乗車したことがありますが、並行する国鉄中央線の特別快速を10km/h上回る、最高速度105km/hの高速走行に驚いた記憶があります。
コメント