誰が直すんだ「レオパルト2」 ウクライナ戦車の修理工場めぐり西側に溝? “供与のその先”で思惑交差
市場拡大を狙った先行投資?
一番ヤキモキしたのはウクライナでしょう。ドイツとポーランドが合意する前から、PGZの工場には少なくとも4両の修理待ち2A4が運び込まれているのが確認されています。「oryx」による損傷数とも一致するので、損傷車すべてが送られたようです。ウクライナは、一刻も早く修理して前線に戻ってきてほしいはずです。ウクライナには戦車を国産できる工業基盤もありますが、パーツ供給や規格違いの問題もあり、西側戦車を修理するのはハードルが高いようです。
そんなウクライナの切実なニーズに応えるべく、ラインメタルはさらにウクライナ国内に修理工場を建設しようと、ウクライナの国営軍需メーカー「ウクロボロンプロム」と合弁会社を設立しています。7月中旬の段階で、12週間以内には稼働可能と表明し、ウクライナ人従業員を雇用し技術研修も行うといいます。ラインメタルはこの会社の株式の51%を保有し経営権を持ちます。ウクライナにしてみれば、前線に近い国内に修理工場があった方がはるかに便利で安心ですが、ドイツ(ラインメタル)にとっては将来の市場拡大を狙った先行投資であることは間違いありません。
ラインメタルのアルミン・パッパーガーCEOは、以前からウクライナ国内に戦車製造工場を建設するとぶち上げるなど積極的な姿勢を示しており、2023年初めにもラインニッシェ・ポスト紙に対し、ウクライナに2億ユーロ(2億1800万ドル)をかけて年間約400両の戦車を生産できる体制を構築したいと語っています。
西側戦車は全損が少なく「固い」ことが確認されましたが、感心してもいられません。回収し修理して前線に戻さなければ意味はないのです。アフタフォローは継続的な事業であり、各国の利害関係が今後顕在化してくるかもしれません。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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