「貨物を守れ」「解放しろ」命運分けた“判断” 関東大震災の非常事態 鉄道員たちはこう動いた

想定外の事態が発生した時、どう行動すればよいのか。とっさの判断がその後の状況を左右しますが、関東大震災発生時の各駅でも、駅長がその判断を迫られました。今回は対照的だった行動を紹介します。

略奪被害にあった駅も

 続いて、同様の事態で対照的な行動を取った別の例を見てみましょう。

 当時の東海道本線は、まだ熱海~函南間の丹那トンネルができていないため、現在の御殿場線経由で沼津方面とを結んでいました。その下曽我~松田間で、沼津発高島行き上り貨物列車が脱線します。線路築堤が約3kmにわたって最大6mも沈下したための脱線でした。

 松田駅長は同列車に積載された貨物が略奪されるのを危惧し、全貨車を鉄線で二重に封印し、ときどき駅員に監視させていました。しかし人員不足のため監視が不完全だった時を狙われて、発災2日後の夕方から翌朝にかけて、大部分の荷が何者かに略奪されてしまいました。

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国府津~下曽我間を走行中だった貨物603列車も線路陥没で脱線した(『関東地方大震火災写真帳』より)。

 一方、鎌倉駅の例を見てみましょう。震災当日はちょうど、避暑客が鎌倉から引き上げる時期でもあり、駅待合室には普段より多い約100名の乗客がいました。地震発生3分前の午前11時55分、1番線に貨物列車が到着します。そこへ地震発生。待合室にいた乗客は、皆すぐに駅舎の外へ飛び出しました。駅舎は壁が落ち窓ガラスが割れますが、倒壊することなく無事でした。

 しばらくして駅付近の民家数か所から火災が起き、火は駅へと迫ってきました。また、津波も材木座海岸から滑川をさかのぼって、鎌倉駅の手前500mほどの地点までやってきました。

 鎌倉駅長・大久保為二郎は、線路上に職員全員を招集し非常点呼をかけます。狼狽した職員を戒め各職員に役目を振り分けます。駅にいる旅客と避難してきた人たちの救助にあたる者、駅舎内にある金品・重要書類・保管荷物を搬出させる者、延焼してくる火災に備える者などです。持ち場を定められた職員は、機敏に行動を開始しました。

【え…】略奪にあった貨物列車です(写真)

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