「零戦を再び日本の空へ」が難しい理由 コスト以外にもある“壁” ただ保存機にとってはメリットも

欧米では、動態保存されている昔の軍用機が有料のエアショーで飛行し、観客の目を楽しませていますが、日本には動態保存されている例がありません。なぜ、日本では零戦など昔の飛行機が、エアショーで飛んだりしないのでしょうか。

欧米では扱いの違う「エクスペリメンタル」登録

 実は、これら民間所有のウォーバーズも「エクスペリメンタル」登録。ただし、日本とは扱いが大きく異なります。

 一例としてアメリカでは、エクスペリメンタル機であっても一般の旅客機などと同様に「N」で始まる登録記号(Nナンバー)が付与されます。違いは種別欄に「エクスペリメンタル」と表記される点。それを除けば、扱いは一般の航空機とあまり変わりません。エアレースで飛んでいるレース機も、1機ごとに異なる改修をしているため「エクスペリメンタル」機に分類されています。

 この背景には、日本とは比べものにならないほど豊かなゼネラル・アビエーション(軍やエアラインなどを除く一般の民間航空)文化があります。自家用機を保有する人も多く、エアラインや軍のパイロットで、初飛行はゼネラル・アビエーションだった……という例も少なくありません。

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イギリス空軍の専門部隊により動態保存されているホーカー・ハリケーンとアブロ・ランカスター(画像:Crown Copyright)。

 自作機や復元機を飛ばそう、という人も歴史的に多く、少しずつ安全性を国に認めさせ、現在に至っているのです。日本では、まだそういったゼネラル・アビエーションの文化は広く普及しておらず、自作機や復元機の自由な飛行を国が容認するまでには至っていません。

 第2次世界大戦前には日本でも有料のエアショーが各地で開催され、将来のパイロット育成に資するとして、文部省が学校にグライダー部を作るよう奨励したこともありました。しかし、敗戦が大きな転換点となりました。日本占領の元締めとなったGHQ(連合国軍総司令部)による航空禁止令は「航空機産業の遅れを招いた」と表現されますが、それ以上に人々から「空を飛ぶこと」を奪い、ゼネラル・アビエーション文化の流れを断ち切ってしまった面が大きかったように思われます。

 冒頭に記した実業家が取得した零戦も、そのままアメリカの「Nナンバー(エクスペリメンタル登録)」で維持するという手段もありましたが、それでも耐空証明を更新するたびにアメリカへ移送しなくてはならず、日本で維持するには費用がかかりすぎます。ウォーバーズをはじめとした復元機を日本で動態保存するのは、現実的ではないと言えるでしょう。

【えー】もはや別モノ! 復元「ウォーバーズ」のコックピットほか(写真)

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