「零戦を再び日本の空へ」が難しい理由 コスト以外にもある“壁” ただ保存機にとってはメリットも

欧米では、動態保存されている昔の軍用機が有料のエアショーで飛行し、観客の目を楽しませていますが、日本には動態保存されている例がありません。なぜ、日本では零戦など昔の飛行機が、エアショーで飛んだりしないのでしょうか。

動態保存は果たしてベストか?「テセウスの船」のジレンマ

 では、日本で動態保存できないことは欠点なのかというと、必ずしもそうではありません。古代ギリシャの伝説「テセウスの船」と同じジレンマが、動態保存には存在するのです。

「テセウスの船」とは、ギリシャ神話に登場するアテナイ(後のアテネ)王、テセウスがクレタ島での戦いに勝利した際、帰還した時に乗っていた木造の船を後世に伝えるため保存したというのに起因する例え話です。末永く残すため、経年変化で朽ちてしまった部分は徐々に新しい木材で修復されていきますが、やがて修復を重ねた船からはオリジナルの部材が消えてしまいました。

 そして、遂にオリジナルの部分がほとんどなくなってしまったとき、はたしてこの船は「テセウスが乗って勝利した船」そのものと言えるのか――という問いかけです。

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室屋義秀選手のエアレース機「エッジ540」もアメリカのエクスペリメンタル登録(咲村珠樹撮影)。

 同じことがウォーバーズなど復元機の動態保存にも当てはまります。飛べる状態を維持し続けるということは、計器や無線機などを現代の規定に適合させるため、新しいものに置き換えていかねばなりません。

 構造部材も経年劣化するため、飛行に耐えるよう新しくしていく必要があり、その分オリジナルの部品は減っていきます。そのため修復を重ねると、将来的に「同じ形をした新造機」となる可能性を含んでいます。

 旧日本軍機は残存する個体が少なく、ほぼオリジナルに近い状態で動態保存されているのは、アメリカのカリフォルニア州チノにある航空博物館「プレーンズ・オブ・フェイム」の零戦五二型くらい。実業家が入手した零戦二二型も、残骸をもとにしながらも胴体や主翼など大部分が新造されたものになっており、海外のデータベースサイトによっては「レプリカ機」に分類されているのが現状です。

【えー】もはや別モノ! 復元「ウォーバーズ」のコックピットほか(写真)

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