「零戦を再び日本の空へ」が難しい理由 コスト以外にもある“壁” ただ保存機にとってはメリットも

欧米では、動態保存されている昔の軍用機が有料のエアショーで飛行し、観客の目を楽しませていますが、日本には動態保存されている例がありません。なぜ、日本では零戦など昔の飛行機が、エアショーで飛んだりしないのでしょうか。

日本ではオリジナルを後世に残す「静態保存」が向いている?

 また、空を飛ぶばかりが動態保存ではありません。イギリスなどでは、耐空証明を取得せずエンジンを稼働状態にしている「飛ばない」動態保存機もいくつか存在しています。耐空証明をクリアし続けるのは費用も多くかかりますが、エンジンを動かすだけなら整備を万全にすればOKなので、負担は少なく済みます。

 これら「飛ばない」動態保存機は、エンジンを動かして地上を移動させるタイプの有料イベントも年数回実施されています。寄付や奉仕活動の文化が根付いていることもあって、維持費はファンクラブ制度で寄付を募ったり、関連グッズを作って販売したりして捻出しているようです。

 逆に静態保存であれば、適切な保存処理を実施することで、オリジナルの部分を長く残すことができ、後世の研究に役立てることが可能です。

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エッジ540の胴体に取り付けられた「EXPERIMENTAL」を示す銘板(咲村珠樹撮影)。

 その好例が、旧陸軍の福生飛行場(現:横田基地)で鹵獲(ろかく)され、2023年現在は生まれ故郷である川崎航空機(当時)岐阜工場に近い「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」で展示されている三式戦闘機「飛燕」です。川崎重工の手で2016年に実施された大規模修復時、塗膜を剥がしオリジナルに限りなく近い状態に戻されたのち、東京文化財研究所の監修で所有する一般財団法人 日本航空協会が調査したところ、今までわからなかった製造時の様子などが新たに判明しました。

 日本でウォーバーズを始めとした復元機を動態保存するのは、法令面で難しいのが現状であり、それを変えていくには長い年月が必要なうえ、その前提となる文化面での環境すら整っていません。現状を変えていく努力は必要ですが、その間にもできることとして、今あるオリジナルの個体を適切に保存し、劣化から守っていくことが大切でしょう。

 戦争という悲しい過去から解き放たれ、大空を自由に舞うウォーバーズの姿を日本国内で見たいと願うのはファンだからこその夢と言えますが、航空機を「産業文化財」として見ると、必ずしも飛ばすことがベストではありません。個体数の多い機種なら話は別ですが、数少ない貴重な日本機の場合、静態保存でオリジナルの状態を維持し、後世に残すことの方が、より重要かもしれないのです。

【了】

【えー】もはや別モノ! 復元「ウォーバーズ」のコックピットほか(写真)

Writer:

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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