なぜ「日本の道路は信じがたいほどひどい」と言われちゃったのか 外国調査団が仰天したその光景

終戦間もない1950年代、アメリカの調査団が日本の道路事情を「信じがたいほど悪い」と評価したことは、戦後の道路建設史における出発点のように語られることもあります。なぜ日本の道路開発はそこまで遅れていたのか、前時代を検証します。

難航する戦前・戦中の道路事業

 1937(昭和12)年日中戦争が勃発すると、予算を戦費に取られ、内地の道路事業ばかりを優先できる状況ではなくなります。この当時、1939(昭和14)年末までに改良が完了していたのは、国道は21%、府県道は12%のみとわずかなものでした。

 とはいえ、戦時下の厳しい財政事情でも、政府は道路事業を進めようとしました。ただ第二次道路改良計画は見直され、道路舗装2か年計画に変更。当時の財政事情を反映したこの舗装事業には、簡易舗装の技術が導入されたことが背景にあります。この計画によって、1925(大正14)年時点で12.4%であった東京の道路舗装率を、1937(昭和12)年には52.7%にまで引き上げることができました。

 他方、モータリゼーション先進国で高速道路の建設も進んでいたアメリカからの技術導入や、グレーダーなどの新型機械による機械化施工も行われるようになりました。

 戦時下も道路事業はさらに進み、1940(昭和15)年には関東と関西を結ぶ高速道路として「弾丸道路計画」が始まり、自動車による軍事輸送の必要性もあって、大戦半ばの1943(昭和18)年には全国自動車国道網が計画されます。このように大正時代以降、数々の困難にもかかわらず休まず進められた日本の道路事業でしたが、弾丸道路計画開始の翌年に始まった太平洋戦争の影響は大きく、やがて計画は頓挫を余儀なくされたのです。

 戦局が悪化すると、輸入に頼るアスファルトの入手が困難になり、成人男性が徴兵されたことで労働力も不足し、道路事業は停滞しました。道路は軍の活動にも不可欠でしたが、戦争中は道路舗装2か年計画の5分の1レベルしか達成できず、ついには補修もままならない状況に陥り、国道全体の舗装率は17%にまで落ち込みました。

 そして、道路事業どころではない状況のまま、日本は敗戦を迎え、事業半ばで放置された「信じがたいほど悪い」道路が、戦後の日本に残されたのでした。

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環七通り(手前から奥へ)と第二京浜が交わる東京の松原橋。1940年にできた日本初の自動車道路の立体交差(画像:Google earth)。

 もともと道路の近代化に大幅な遅れを取っていた日本は、大正時代以降、道路事業を懸命に推進し続けたものの、戦後の1950年代に至るまでその遅れを取り戻すことはできなかった、といえるでしょう。しかし戦前からの悲願であった道路整備への思いは、幻の弾丸道路の復活というべき東名・名神高速道路や、東京の震災復興で予定されていた環状7号線、環状8号線などとして実現され、戦後日本の急速な経済成長を後押ししました。

 1969(昭和44)年、東名高速の開通式に招待されたワトキンスは、「かくも短期間に道路の建設をなしとげた国は世界に例がない」と驚嘆したと伝えられます。

【了】

【え…】これが「信じがたいほどひどい」と言われた日本の道路です(写真)

Writer:

各種雑誌で近代戦史関連の記事を寄稿。著書に日露戦争の陸戦をテーマとした『日露激突 奉天大会戦』(学研)、太平洋戦争テーマの『太平洋島嶼戦』(作品社)がある。

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