マンガかっ!「秘密兵器とパイロットが突如亡命」してきたホントの話「ベレンコ中尉事件」とは
調べてみた結果は…
喉から手が出るほど欲しかったMiG-25のデータどころか、実機がまるまる日本領内に飛び込んできたという事態に、アメリカもすぐ機体調査に乗り出そうとしますが、勝手に乗り付けられた函館空港は大変でした。ソ連の特殊部隊が機体を破壊にくるという噂もあり、警察だけではなく、陸上自衛隊が函館駐屯地祭用に用意していた61式戦車や、高射機関砲などを用意して、万が一の事態に備えたと言われています。
ベレンコ中尉の乗ってきたMiG-25は日米が協力して検査する権利を行使した上で、ソ連に返還されることになります。調査の結果、同機は「自国領域へ侵入してきた超音速軍用機を迎撃するため、運動性能を犠牲に、速度と高高度飛行のみに重きを置いた迎撃機」であることが判明。エンジンも、燃費効率が良く航続距離を延ばせるターボファンエンジンではなく、当時自衛隊が運用していたF-4EJなどと同じターボジェットエンジンであることがわかり、航続距離もかなり短いことが明らかとなります。
結局この調査の結果、MiG-25は“思っていたほど脅威ではない”という評価になります。
しかし、この事件は日ソの国家防衛のあり方には大きな影響を残します。日本では、低空で侵入してきた同機をレーダーで一時、見失ったため、戦闘機のレーダーのルックダウン能力強化や早期警戒機導入のきっかけにもなりました。
ソ連では、ベレンコ中尉の亡命理由のひとつに軍での待遇の悪さがあったため、この事件後はソ連空軍・防空軍における待遇改善が始まります。また機体情報がバレバレになってしまったため、開き直って東欧や中東国家にも積極的にMiG-25の売り込みを開始しました。
さらに自国用としては、同機をベースにレーダー能力を強化し、地上レーダーからの管制を受けられない地域でも単独で迎撃を行える長距離迎撃機MiG-31を開発。1982(昭和57)年から運用を開始した同機は2023年現在でもロシアで運用されています。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
コメント