750億円かけ日米共同開発 なぜ新型迎撃ミサイル必要? 従来型ではダメなのか

SM-3があるけど… GPIの意義とは

 さらに、現在BMD任務に就いているイージス艦には迎撃ミサイルとして「SM-3」が搭載されていますが、このSM-3には最低射高、つまりそれ以上低い高度を飛んでいる目標は迎撃できないラインが、約70kmとされています。一方、極超音速兵器はこれより低いか、少なくとも相当ギリギリの高度を飛翔するため、SM-3では対応が困難。そこで新たな対抗策としてGPIの開発が始まったというわけです。

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極超音速滑空兵器の軌道イメージ(画像:アメリカ会計検査院)。

 ただし現在、極超音速滑空兵器への対抗策として検討されているのはGPIだけではありません。たとえば、アメリカ海軍では既存の艦対空ミサイルである「SM-6」を使い、GPIを終末段階(目標に向かって落下してくる直前の段階)で迎撃しようと試みています。また、航空自衛隊にも配備されている地対空ミサイルシステム「PAC-3」でも、同じく終末段階において迎撃できる可能性はあるでしょう。しかし、それでもGPIの意義が揺らぐわけではありません。

 GPIは、こうした終末段階での迎撃システムよりも前方での対応を任務としています。そのため、これを組み合わせることにより、多層的な防衛網を構築することができます。もし、終末段階の迎撃システムのみに頼る場合、それが迎撃に失敗するとあとにはもう策がない、という事態に陥ってしまいます。つまり、GPIが加わることにより、より広い範囲を、より確実に防護できるようになるわけです。

 もともと、GPIはアメリカでその開発が決定されたもので、現在は企業間の競合が行われています。当初は、レイセオン、ノースロップグラマン、ロッキードマーチンが名乗りを上げていましたが、現在ではロッキードマーチンが脱落し、残る2社が契約獲得を競い合っている状況です。日本でも、2023年8月31日に公表された防衛省の令和6年度概算要求において、共同開発に際して日本側が担当するパートに関する調査などのため、750億円の予算が盛り込まれました。

 もともと、日本とアメリカでは先述したSM-3の最新バージョンである「SM-3ブロックIIA」を共同開発したという実績があります。今回のGPI共同開発では、その際の経験や教訓などが生きることになるでしょう。

【了】

【史上初!】迎撃ミサイル「GPI」の発射イメージ

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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