無人機パイロットが「ブラック仕事」って? 陸自「戦闘ヘリ全廃」への懸念 米でなり手不足が深刻なワケ
無人機だからってパイロットが疲れないわけじゃない
ほかにも、パイロットの負担という面で大きな差が出ます。パイロットにとって最も負担が掛かるのは飛んでいるときです。これは飛行時間として客観的に見比べることが可能ですが、有人機の場合、一般的なパイロットが年間200時間から300時間ほどの飛行時間なのに対し、無人機の場合は遠隔操作とはいえ、年間900時間以上もの飛行時間になるそうです。
つまり、「労務」として考えると、有人機よりも無人機の方が大きな負担をかけていることになります。その影響からか、アメリカ陸軍においては、深刻な無人機パイロット(オペレーター)不足に陥っており、それまで同パイロットには士官しかなれなかったのに、いまでは下士官も加わるようになっています。
無人機は決して万能ではありません。地球の裏側でも衛星通信などを用いて遠隔操作できますが、敵の妨害電波や電子パルス攻撃などへの対応が必要になります。場合によってはシステム自体がハッキングされる可能性もあるでしょう。そうなると、敵に操られた無人機はいずれコチラに飛んできます。
近い将来、陸上自衛隊は攻撃ヘリコプターや観測ヘリコプターを全廃して、新たな無人機部隊を発足させます。これがどういった結果になるのか。確かに部隊を運用するコスト面でいえば、有人の攻撃ヘリコプターの方が高いといえるでしょうが、無人機になったとしても運用コストがそこまで大きく下がるとは考えられません。
また、攻撃ヘリコプターや観測ヘリコプターのパイロットに支払われている飛行手当の行方も気になります。アメリカ空軍やアメリカ陸軍ではしっかりと飛行手当を支払っていますが、陸上自衛隊の場合はまだハッキリしないのが実情です。
仮に、攻撃ヘリコプターや観測ヘリコプターのパイロットに支払っていた飛行手当を取り止めることで経費を節約するという考えがあるのであれば、その代償はより大きなものとして陸上自衛隊に返ってくるでしょう。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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