レオパルト2×ルクレール=欧州スーパー戦車!のはずが… 独仏共同開発に暗雲、なぜ?

交錯する思惑 一枚岩ではない独仏

 あるドイツ産業界関係者も、『ハンデルスブラット』の取材に「我々はもはやMGCSを信じていない」と答えているように、ドイツ産業界内部からも不協和音が聞こえてきます。

 MGCSに必須とされた130mm滑腔砲はラインメタルの担当になっているのですが、2022年の兵器展示会「ユーロサトリ2022」にラインメタルは、130mm滑腔砲を搭載する独自開発中のレオパルト2の発展型「KF51 パンター」のコンセプトモデルを独自に出展しました。MGCSのコンセプトモデルを出展したKNDSは、コンソーシアム企業であるはずのラインメタルの抜け駆け的な動きを批判しています。

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ラインメタルが出品したKF51パンター。主砲は130mm砲。同社によれば、あくまでレオパルト2の発展型でMGCSの対抗馬ではないとの立場である(カール・シュルツ撮影)。

 KNDSのドイツ側責任者であるラルフ・ケッツェルは、ラインメタルはドイツ政府の要請でコンソーシアム企業として後から加わった経緯があり、KNDS創設時には想定されていなかった複雑な三角関係となってしまったことを明かしています。

 ルクレールを早く更新したくてMGCSニーズの高いフランスと、レオパルト2の好調さからMGCSニーズの低いドイツの温度差は、ますます明瞭になってきています。さらにややこしいことに、KNDSの持株比率は独ウエッグマン&CO・GMBHが50%、仏ジアット・インダストリー50%であり経営権が二分されていることで、独仏が対立した場合、経営方針が決められなくなる可能性さえ出てきています。7月にルコルニュ仏軍事大臣とピストリウス独国防相は、MGCS開発を最後までやり遂げると再度確約しました。

 戦車需要の拡大により、欧州にも韓国のK2戦車が参入するなど戦車市場は激変しており、現代戦で戦車の必要性が見直されて市場拡大が見込まれる中でも、MGCSの将来は明るいとはいえないようです。

【了】

【ドゴーン!!】独×仏「EMBT」がぶっ放す!

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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