初の一般公開「陸自オスプレイ」…あれ、米海兵隊のと違う!? 独自の装備“背中のコブ”は何のため?
まだまだある通信用アンテナ こんなに必要?
これら2つのアンテナが陸上自衛隊仕様のV-22「オスプレイ」の特徴ですが、それ以外にも機体には通信用アンテナがいくつも設置されています。たとえば前出の「SATCOM」アンテナの前側にある小さな角状の突起物は航空管制用のVHF/UHFアンテナです。
また、さらに海兵隊のMV-22には装備されていないアンテナとして、垂直尾翼の前縁上部、衝突防止灯(アンチコリジョンライト)前にあるフィン状のものがあります。これは、アメリカ空軍のCV-22も初期では付いていませんでしたが、後期生産型からは搭載するようになっています。このフィンですが、話によると無線機のアンテナだそうです。それが自衛隊のV-22にも搭載されているということは、陸上自衛隊の保有する広帯域多目的無線機用のアンテナではないかと筆者(斎藤大乗:元自衛官ライター/僧侶)は考えます。
なぜ、ここまで数多くのアンテナが用意されているのか、ここからは筆者の推察になるのですが、おそらく航空管制用はパイロットのみで、広帯域多目的無線機用は、同乗者も使用可能だと思われます。
広帯域多目的無線機は、「コータム」の通称で知られる陸上自衛隊の野外通信システムのひとつです。これは航空科に限らず、陸上自衛隊のあらゆる部隊に広く配備されています。ということは、陸上自衛隊の「オスプレイ」で空輸される第1空挺団(日本唯一の落下傘降下部隊)や水陸機動団(日本版海兵隊と揶揄される水陸両用部隊)も装備していることから、彼ら(被空輸部隊)が団本部を始めとした友軍部隊と交信するために装備しているのではないでしょうか。
このように複数用意することで、パイロットと被空輸部隊が別々の場所(部隊)と同時並行で個別に交信することが可能です。また別々であれば混信を防ぐことにもつながります。そういった観点から、これだけさまざまな通信装置を搭載しているものと思われます。
陸上自衛隊で本格運用が始まったV-22「オスプレイ」。ただ、木更津駐屯地への配備はあくまでも暫定です。当初の配備先であった佐賀空港隣接の新駐屯地が、開設遅延で配備できなかったことから、代わりに木更津駐屯地に留め置いている状況なのです。
地元自治体である木更津市などは、2020年7月から5年以内を目標に、その後は他基地へ移転するという内容で受け入れを認めたため、それらを鑑みると2025年ごろには同地から移駐する計画です。
もしかしたら木更津航空祭でV-22「オスプレイ」が飛行展示するのは、あと数えるほどしかないかもしれないので、首都圏在住で一度見てみたいと思っている人は、来年、再来年には航空祭に足を運んでおいた方が良いかもしれません。
【了】
Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)
木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。
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