どうせレプリカのロケット…え、NASAの本物!? 世界が注目の博物館 北陸に“宇宙の歴史”を集結させるまで

ロシアものは一世一代の大交渉で入手

 1990年ごろまでの宇宙開発において、アメリカのNASAと並んで世界をリードしていたのはソビエト連邦(現ロシア)でした。宇宙博物館で世界の宇宙開発を紹介するのであれば、同国の偉業も外すことはできません。しかし、高野さんはソビエト連邦にはコネクションがなく、流石にNASAのように単身で乗り込むワケにもいきません。しかも、当時はソビエト連邦が崩壊して、ロシア連邦に変わった混乱期でもありました。

 ダメ元でソビエト時代の宇宙開発を継いだロシア宇宙局に宇宙船の購入を打診してみると、意外にもレスポンスがあり、購入交渉を進められることになりました。しかし、それは簡単なことではありませんでした。宇宙局の所有物なのに、交渉相手となったロシア人はなぜか民間会社の社員を名乗っていたのです。当時のロシアは国自体が混乱期にあったこともあり、彼らを信頼することができず、この申し出自体を怪しんだそうです。

 そこで高野さんは、売ってくれる宇宙船をアメリカまで持ってきてもらい、前述の借用契約で知り合ったNASAの職員に、同地で鑑定人として協力してもらうことを思いつきます。

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月面、火星での走行を想定して作られたグラマン社製の「ルナ・マーズローバー」。実験用のプロトタイプで、宇宙には行かなかったが開発のための実験は繰り返し行われたという(布留川 司撮影)。

 ロシア側との交渉場所として選んだのはアメリカ中西部のホテルの駐車場。素人目には無茶苦茶な条件に思えますが、当時のロシア側も外貨が欲しかったのか、その条件を受け入れて宇宙船をコンテナに入れて指定場所まで持ってきました。

 交渉相手がアメリカまで運んできたのは「ヴォストーク宇宙カプセル」と「モルニア通信衛星」、無人月面探査機「ルナ24号」の3つ。交渉の際にはNASAの中堅職員を高野さんの「個人的なアメリカ人の友達」という体で立ち会わせ、これらが本物かをすぐに確認してもらったそうです。結果は「間違いなく本物」で、特に無人月面探査機「ルナ24号」については、現存するものは目の前にある1機だけという超レアな一品だったとのこと。

 NASAの職員は「絶対に買うべきだ」とアドバイスしてくれましたが、交渉は簡単には行きませんでした。交渉相手のロシア人は、なんと売値を当初の約束よりも一桁多い金額に吊り上げてきたのです。

【殺されるかと思った!】これがロシア人に吹っ掛けられた「幻の」ソ連製宇宙船です(写真)

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