「非常に感謝」国立科学博物館のクラファン“9億円”で史上最高額に でも「これ以上は難しい」ワケ

返礼品のための仕事はこれから

 今回の記者会見で、篠田館長は「もちろんこうした活動には国がお金を出すものだから、一般の人たちの支援を受けるのはおかしいという意見もある。しかし、こちらはお金がなくて困っている状況で、死ねと言われて死ぬわけにはいかない」と述べていました。

「全国的に博物館が大変なんだということが認識され、そこに寄付しようという機運が大きくなっていると思う。そういうことができる状態を、実は私達のクラウドファンディングが作ったと考えている」(篠田館長)

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東洋工業(現:マツダ)が製造した「コスモスポーツ」(深水千翔撮影)。

 一方で、ウクライナ戦争をはじめとした国際情勢の変化や働き方改革の進展に伴って、今後も光熱費や物価、人件費などが上昇し続ける傾向にあることから、クラウドファンディングが成功しても安定した経営を行えるかは不透明な状況です。支援金が9億1500万円集まったと言っても、そのうち約3億円が返礼品費や手数料に充てられ、国立科学博物館として使用できる資金は約6億円。肝心のコレクションの充実・管理に向けた資金は4.4億円です。

 篠田館長は「返礼品のために、ほぼ全ての職員が3月までにかなり仕事をしなくてはいけない。それを考えると、すぐにできるようなものではない」と話しており、実はクラウドファンディングの実施は国立科学博物館に対しても大きな負担を強いると認めていました。

 そのため「もうこれ以上クラウドファンディングをやるというのは、なかなか考えにくい」との認識を示しています。

 また、国立科学博物館で収蔵物を一般に公開している施設は上野本館のみであり、どうしても航空機や車といった産業遺産に関しては展示するスペースが用意できず、企画展やクラファンの返礼品であるバックヤードツアーでしか見られません。

 上野は建物の拡張がほぼできないため、これ以上展示を増やすことも難しいでしょう。クラウドファンディングは成立したものの、国の資金が投入されている組織として国民にどう還元していくのか。また、筑波に収蔵されている大型の標本や産業遺産などの公開の在り方をどうするのかなど、いまだ課題は山積みというのを、今回のクラファン成功で改めて実感しました。

【了】

【再び見られる日は?】「ヒロサワシティ」に移った“YS-11” 今こんな感じです!(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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1件のコメント

  1. 国立科学博物館は国内唯一無二のものなのだから収蔵し大切に保管しておくことだけすればよろしい。政府はお金がないなら捨ててしまえとでも本気で思っているのか。いつからこんな国になってしまったのか。