何の意味が?「戦車に金網」取り付けるワケ 撃ち抜かれて終わり…とは限らない命守る工夫だった!
ベッド・スプリング付けたケースも
こういった成形炸薬弾に対する防御はドイツが先駆者でしたが、第2次世界大戦末期にはドイツ軍の歩兵携行型対戦車てき弾発射器、いわゆる「パンツァーファウスト」や、ドイツ版バズーカ「パンツァーシュレッケ」に悩まされたソ連軍が、戦場で拾ったベッド・スプリングを枠ごとT-34戦車の砲塔側面に強引にぶら下げるなどして、シュルツェンと同等の効果を得ようとしています。まさに切羽詰まった戦場の即席サバイバル術といえるでしょう。
これら第2次世界大戦と同様のことが、今日ウクライナで戦うロシア戦車などでも行われるようになったというわけです。やたら金網が被せられていたりするのは、まさに「現代版ベッド・スプリング」というわけです。とはいっても、もちろん大戦時のように戦場で拾った本物のベッド・スプリングではなく、おそらく前線に設けられた屋外整備場などで材料を集めて応急に造ったものだと考えられます。
こういったことを鑑みると、攻撃手段として成形炸薬弾が猛威を奮っているからこそ、自らの命がかかった実戦下、当事者たちが、なりふり構わず全力で「生き残るための努力」をしているともいえるでしょう。
なお、最近では、装甲の薄い砲塔上面などを狙い撃ちする対戦車ミサイルやドローン(無人航空機)などからの直上攻撃(トップアタック)に対処するため、屋根のように金網や格子状のスラットアーマーを取り付けている車両も多々見られるようになりました。
同様の装備は、2023年10月以降、パレスチナ自治区ガザに攻勢をかけているイスラエル軍AFVでも見受けられます。現状の対戦車兵器の傾向を鑑みて、もしかしたら、この流れは自衛隊やアメリカ軍などにも波及するかもしれません。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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