予算削減だけが理由じゃない? 爆撃機B-52唯一の自衛兵器「尾部の機銃」が消えたワケ 因縁の事件とは

アメリカ空軍のB-52戦略爆撃機から尾部機銃がなくなったのは、脅威がミサイルになったことや予算削減の影響だとか。しかし、実はその直前に起きた湾岸戦争で同士討ちをしたことも影響したそうです。

たった1人離れていたB-52の尾部銃座

 アメリカ軍は1930年代後半に4発エンジンの大型爆撃機B-17「フライングフォートレス」を採用して以降、現用のB-52「ストラトフォートレス」まで歴代の爆撃機には尾部に機銃を装備してきました。
 
 しかし、2023年現在、B-52の尾部機銃は撤去されています。なぜなくなったのでしょうか。

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アメリカ空軍のB-52H戦略爆撃機。赤い矢印で指し示したものが20mmバルカン砲の尾部機銃(画像:アメリカ空軍)。

 そもそもB-52は、1952年に初飛行して以来、実に70年もアメリカ空軍の主力爆撃機として第一線に立ち続けています。そのため、何度もモデルチェンジを繰り返しており、初期型のB型から現用のH型まで複数種類が生まれています。

 そのうち最初に戦力化されたB-52Bから中期型といえるB-52Fまでは胴体後端に銃手席が設けられていました。この銃手席は小型のカプセルのような構造で与圧機能を備え高高度の長時間飛行にも対応したものでしたが、パイロットや爆撃手など機首に設けられたコックピットに搭乗している乗員が射出座席に座っていたのに対し、銃手席にはそういったものがなく、ほかの乗員と比べると緊急時の脱出性能で見劣りしていました。
 
 加えて尾部の銃手席には、もう一つ大きな問題がありました。それは、機体の重心から離れた場所に位置するため飛行中の動揺が大きいことでした。それは「コックピットが上下に1フィート(約30.5cm)揺れると銃座では6フィート(約1.83m)揺れる」とまでいわれるほどだったとか。

 この揺れは、B-52が就役した1950年代当初は高高度爆撃が中心であったため、問題にはなりませんでした。しかし、敵の防空体制が進化するにつれ低空侵攻の必要性が増すようになると無視できない問題になりました。低空を高速で飛行すると機体は気流の変化に敏感に反応するため揺れが大きくなります。実際、銃手席はかなりの揺れであったと想像されます。

【一人で敵機と対峙…】孤独な尾部銃座の操作席の様子(写真)

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