予算削減だけが理由じゃない? 爆撃機B-52唯一の自衛兵器「尾部の機銃」が消えたワケ 因縁の事件とは
圧倒的な空軍戦力を誇る米軍だからこその決断
B-52 は、AGM-88ミサイルの直撃こそ免れたものの、至近で爆発したため胴体後部を損傷しました。そのため、このB-52は最寄りのサウジアラビアの航空基地に緊急着陸。損傷状況の調査から、地対空兵器によるものではないと判定され、最終的に同じ空域を飛行していたF-4Gから発射されたAGM-88による被害と断定されました。
乗員に被害がなかったのが不幸中の幸いでしたが、その後、被弾したB-52はインド洋の真ん中にあるディエゴ・ガルシア基地を経由して、インド太平洋地域で唯一の大規模修理能力を備えるグアムのアンダーセン空軍基地まで戻されています。
こういったことがあったのも、B-52から尾部機銃がなくなった一つの遠因でしょう。ただ、ソ連(現ロシア)や中国の爆撃機にはいまだ尾部機銃を装備したものが存在します。
ひょっとしたら、アメリカ空軍が戦略爆撃機から尾部機銃を全廃する判断ができたのは、自軍の優れた制空能力、つまり世界一とも評される戦闘機戦力に自信があったからなのかもしれません。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
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