アメリカの虎の子?「ヴァージニア級原潜」が世界の抑止力のカギになる理由 就役もう21隻目
インド太平洋の核シェアリングで論点になるか ヴァージニア級
アメリカを含むNATO(北大西洋条約機構)諸国による「核シェアリアング」協定は、核兵器の運用において、核を保有していない国も協力するというものですが、この協定では航空機搭載型の爆弾や基地発射型の弾道ミサイルの運用が想定されています。
トマホークには射程2500kmの核弾頭タイプ(長崎型原爆の4分の1~100倍のものまで選択可能)があり、当然これらの運用にヴァージニア級が使用されることが考えられます。将来、オーストラリアがアメリカと核シェアリングするかは分かりませんが、ヴァージニア級の導入はその道につながっているとみられます。
日本においても1970年代に、海上自衛隊による戦略ミサイル型原潜(SSBN)の保有が議論されたことがあります。もし今後、当時の議論が復活し、現在の日本が核シェアリングするならヴァージニア級が有力な候補になる可能性は高いでしょう。
秘匿性の高い潜水艦はイージス艦などの水上艦艇よりも敵地に近づけるため、巡航ミサイルを搭載すればより内陸部の敵基地を攻撃できます。そのため核保有国だけでなく、北朝鮮や韓国も誘導ミサイル発射型潜水艦の開発や導入を計画しており、2019年には文 在寅(ムン ジェイン)政権当時の韓国がロサンゼルス級攻撃型原潜の購入をアメリカに打診して断られた経緯があります。
強力な敵基地攻撃能力を持つヴァージニア級は、将来のアメリカ海軍の潜水艦戦力の要であるだけでなく、各国による核シェアリングの可能性につながる「鍵」になる素養も秘めています。予断を許さない現在の世界の軍事バランス、日本にとっても他人事ではない集団安全保障問題を考えるうえで、無視できない存在となっていくかもしれません。
【了】
Writer: 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)
軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。
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