完全無人の「考える潜水艦」? 防衛装備庁が開発する“期待の新装備”開発拠点をみてきた 頭脳はまだ発展途上?

長期運用を目指して試行錯誤中!

 長期運用型UUVは7日間の連続した運用が可能だそうです。しかし、7日間はあくまで研究のマイルストーンであり、より長期間の運用を目指しています。ここで問題となるのが、エネルギーです。

 アメリカ海軍の大型UUV「Orca」は約2か月動くことができると言われていますが、これは同機がディーゼル・エレクトリック機関を搭載しているからです。日本で開発が進められている長期運用型UUVはリチウムイオン電池を搭載していますが、現時点の技術では電池より化石燃料のほうが、エネルギー密度(体積あたりのエネルギー量)が高いです。これはガソリン車とEV車の走行距離を考えるとわかりやすいでしょう。

 一方でディーゼル機関は吸排気のため浮上する必要があります。これは隠密行動が求められるUUVにとって大きなデメリットとなります。日本ではより長期間の行動を可能とするため、燃料電池やAPI機関など、さまざまな動力源を模索しているようです。

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海中の音響環境を再現できる水中音響計測装置の巨大水槽。縦横35×30m、深さは11mもあります。まるで巨大ロボットアニメの研究施設のような迫力だ(綾部剛之撮影)。

 このように、現在テストが続く長期運用型UUVですが、これはそのまま部隊配備されるものではなく、あくまで艦艇装備研究所による実験機なのだそう。部隊配備を目指す「量産機」となれば、機能や性能など部隊側のニーズなどに沿ったものとなっていくと思われますが、長期運用型UUVはそのための技術的な土台になるでしょう。

 今回、防衛装備庁の岩国海洋環境試験評価サテライトを取材したことで、改めて島国日本にとって長期運用が可能な大型UUVは、確実に将来、必要不可欠な防衛装備となると実感しました。

【了】

【意外とデカい】これが自衛隊の救世主「長期運用型UUV」です(写真)

Writer: 綾部剛之(編集者/記者)

軍事関連をメインとした雑誌/書籍の編集者。専門は銃器や地上兵器。

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