「PAC-3をアメリカへ輸出」=安保政策の大転換! 輸出強化が“日本の抑止力”につながる? 何がどう変わるのか
ウクライナ、アメリカの次はどこだ?
加えて、現在ロシアによる侵攻を受けているウクライナのように、国際法に違反する侵略や武力行使、またはその威嚇を受けている国に対して、武器以外の装備品を提供することができるようになりました。たとえば、トラックや高機動車などの車両や、ガスマスク、防弾チョッキ、ヘルメットといった個人装備などがこれにあたります。
さらに、これまで日本国内の民間企業が装備品の修理などを行えるのはアメリカ軍に限定されていましたが、近年イギリスやオーストラリアといった国々との協力関係が深化していることを背景に、今後はアメリカ以外の国の軍隊に関しても、装備(兵器)の修理や整備が可能となります。
これにより、極東地域に展開する各国軍の整備を日本国内で実施することが可能となったことから、こうした国々の艦艇や航空機の活動に関する柔軟性の向上が見込まれます。
このように、海外への防衛装備品移転や、来日する外国軍の装備品整備に関する幅が広がることで、日本はより積極的に国際社会の安定に寄与できるようになると、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。
力による一方的な現状変更を許さないため、すでにその被害を受けている国には直接的、間接的な支援が、またそれをたくらむ国に対しては、同志国と連携してそれを思いとどまらせる抑止が、それぞれ重要となります。防衛装備品の移転は、そのための重要な手段になるといえるでしょう。
今後、日本の装備品が国際社会においてどのように役立っていくのか、ウクライナやアメリカ以外にも提供国は広がるのか、引き続き注視していきたいと筆者は考えます。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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