あまりに代償デカすぎた「ロシア兵器購入」 孤立するトルコ空軍、本当に「中パ製の戦闘機」を選択するのか?
米欧と距離とるとトルコ国産戦闘機にも影響が…
加えて、トルコは初飛行を控えた国産の次世代ステルス戦闘機TFX「カーン」についても、搭載エンジンはヨーロッパ製のユーロジェットEJ200もしくはアメリカ製のゼネラルエレクトリックF110を採用しようと検討しています。
EJ200やF110はユーロファイター「タイフーン」やF-16と同一のエンジンです。したがってトルコがJF-17を導入したら、さらに西側と距離を置くことに繋がるため、威信をかけて開発中のTFX「カーン」についてもエンジンでつまずく可能性が多分にあります。
こうした理由から、筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)はトルコがJF-17を本気で導入する気があるのか、いささか疑問が残ります。結局のところ、トルコはどこかで西側に折れる必要があったと言えるでしょう。
実際、トルコは紆余曲折を経てスウェーデンのNATO加盟の承認と引き換えに、アメリカからF-16V導入を引き出すことに成功しました。
少なくともトルコは、F-35という世界で最も高性能な戦闘機の入手権利を失ったうえに、その穴埋めでユーロファイター「タイフーン」やF-16「ファイティングファルコン」といった欧米の第一線戦闘機すら、一時的とは言え入手困難になりました。
トルコがパキスタン製JF-17を、本当に導入する気があったのかは怪しいところです。これは、ひょっとすると西側への対抗手段のために見せびらかす、いわば「当て馬」にしたのではないでしょうか。
ただ、いずれにせよトルコがJF-17を検討せざるを得なくなったことは、同国の外交的失敗の証といえるのかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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