ウクライナ向けF-16増加で「虎の穴」本格始動へ EU連携の養成学校で “真っ先に” 訓練している国とは?
NATO諸国にもメリット大 F-16で実現した国際的な安全保障
EFTCはこのF-16連合の資金提供によって設立されました。また、ルーマニアは基地とインフラを、オランダが自国のF-16をそれぞれ提供し、契約に則ってロッキード・マーチン社とその下請け企業が人員の派遣と訓練を実施していきます。
なお、ルーマニアはEFTCの設立にあたって「自国のパイロットの訓練を優先させる」という条件を付けています。そのため、この計画はルーマニア自身にも大きなメリットがあるといえるでしょう。
ルーマニア軍はウクライナと同様、長年に渡ってロシア製兵器に依存してきましたが、それに見切りをつけ、その更新用として中古のF-16戦闘機の導入を進めています。しかし、当初は予算不足などの理由から、自国だけでの導入・訓練を進めることに問題を含んでいました。そのようなルーマニアにとってEFTCはNATOのサポートを受けられるため、自国空軍にもメリットのある「渡りに船」といったプロジェクトだったようです。
現在、EFTCではルーマニア空軍の元MiG-21パイロットに対する訓練が行われており、2024年の早い時期にウクライナ空軍のパイロットによる訓練も始まるとされています。
このような多国間で連携した枠組みが作れた要因のひとつに、F-16戦闘機という存在があったことも注目すべきでしょう。
F-16は総生産数が約5000機にもなるベストセラー戦闘機ですが、それゆえに運用国も多く、このような機体提供を含めた多国間での支援を行うことが可能でした。同じ装備を運用することで他国間の軍隊同士で相互運用性(インターオペラビリティ)を高めることは知られていますが、その効果は部隊や作戦といった現場レベルだけでなく、今回のEFTCのような外交を巻き込んだ集団安全保障の分野にも影響があるようです。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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