【空から撮った鉄道】煙を吐き出して東北随一の峠越えに挑み、平坦路ではギャラリーもたくさん「SL銀河」
10月、東北シリーズを3回に渡ってお伝えしました。その別編として、JR釜石線を走った「SL銀河」の空撮を紹介します。運行終了が決まった後、2021年9月の空撮です。
この記事の目次
・2日間で1往復だった「SL銀河」
・釜石線の難所に挑むC58とキハ141形
・勾配に加えヘアピンカーブまで
・沿線にも人、人、クルマ、クルマ…
【画像枚数】全17点
2日間で1往復だった「SL銀河」
「SL銀河」は東日本大震災からの復興を目指し、岩手県営運動公園に保存されていたC58 239号機を動態復活させ、2014年からJR釜石線で定期運行してきた観光列車です。釜石線は25‰の勾配が連続するため、本来は補機が必要となるところ、JR北海道で余剰となったキハ141形気動車の動力装置を生かしたまま「SL銀河」の旅客車両として改装し、キハ141形が補機の代わりとなっていました。
「SL銀河」が走り始めると、震災で疲弊した沿線には再び活気が戻って人々も笑顔となり、観光客も増えていきました。走行区間は花巻~釜石間で、下り列車は土曜日、上り列車は日曜日と、2日間で1往復するダイヤでした。
一般的な蒸気機関車の運行は、日帰りで往復するパターンが主ですが、「SL銀河」の場合は2日間かけて片道ずつの運行と、かなり余裕を持ったダイヤとなっていました。そのため、SLで遠野や釜石を訪れて一泊し、またSLに乗って帰ってくるという旅のスタイルもできました。
“でした”と過去形なのは、2023年6月をもって「SL銀河」の運行が終了したからです。東北観光でも人気の列車でしたが、JR東日本の公式発表では、残念ながらキハ141形が老朽化のために引退することとなったのです。同車両は、もともと51系客車を気動車化改造したPDC車です。ベースの車齢が高齢であったため、運行開始から9年で終了となりました。コンビを組んだ、復活して10年の239号機の今後が気になるところです。
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Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。