戦車の砲なぜ「ツルツル」になったのか? ついに西側すべて“先祖返り”へ
戦車の砲身はライフリング(溝)が刻まれていない滑腔砲です。この形式は19世紀以前に砲のトレンドでしたが、溝付きの普及により一度は廃れ、また主流になったのです。
ついにイギリスも“ツルツル”になる
イギリスの兵器関連企業RBSL(ラインメタル・BAEシステムズ・ランド)が2024年1月、開発中の新型戦車「チャレンジャー3」の新たな画像を公開しました。この戦車は、主砲がついにイギリス伝統の120mmライフル砲からラインメタル製の120mm滑腔砲へ換装されており、北大西洋条約機構(NATO)など他の西側陣営の国と足並みを揃えることになりました。
「ライフル砲」とは、砲身内部に溝(ライフリング)が施された砲全般を指し、溝が入っていないものは「滑腔砲」と呼びます。そもそも、砲や銃など火器の歴史を振り返ると、滑腔砲の方が先に登場し、その後はライフル砲が主流となったものの、戦車砲については溝なしに先祖返りしているのです。
戦車が第一次世界大戦中の1916年9月に世界で初めて実戦投入されました。当時、命中精度と射程に優れることから砲兵の装備する野戦砲は、ほぼ全て砲身内に溝が刻まれていました。
以前は、砲弾が先込め式だったため、溝が刻まれていると弾を奥に押し込めにくく装填に手間取るという理由でライフル砲の使用は限定的でしたが、19世紀中頃以降に砲尾を開閉できる後装式大砲が登場すると、瞬く間に広がりました。当然、戦車は登場当初から後装式の砲が付けられていたため、最初からライフル砲を使用していました。
第二次世界大戦になると急速に砲身は大口径化することになりますが、砲はライフル砲のままでした。しかし、戦後しばらくすると、大きな変化を迫られることになります。APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)と呼ばれる種類の砲弾が登場したからです。
この砲弾は、分厚くなる戦車の装甲をいかに簡単に貫通させるかに主眼が置かれた砲弾です。それまでの徹甲弾と違い、発射後に装弾筒から、タングステンなど硬い素材で作られた侵徹体とよばれる矢のような弾体が分離するタイプの砲弾となっています。
APFSDSは細長いため、着弾時の速度が速く、着弾面積も通常使う装甲貫通用の徹甲弾よりも小さいのが特徴です。そのため、一点に力を集中することができ、装甲への貫通力が格段に向上しています。
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