これも「災害派遣」? 自衛隊はどこまで頼りにされるのか 広すぎる任務 時には心だって病む

災害派遣の経験が自衛隊を強くする

 それぞれの災害派遣は、実施した部隊だけでなく報告書を通じて自衛隊全体で共有されることから、現場での活動は貴重な知見となります。

 現在、能登半島地震に関する災害派遣では、給水支援や入浴支援などが中心になっていますが、そこで多用されている陸上自衛隊の「野外入浴セット」は、1985年の日航機墜落事故で派遣された経験をもとに、隊員の士気向上を目的として開発されたものです。このほか海上自衛隊の輸送艦などによる入浴支援も、被災者に喜ばれています。

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令和6年能登半島地震の被災地に開設された野外風呂。陸上自衛隊には野外入浴セットという装備がある(画像:統合幕僚監部)。

 自衛隊における災害派遣の取り組みを大きく変えたのが、1995年の阪神・淡路大震災でした。自衛隊発足以来、初めてといえる大規模かつ広域にわたる災害派遣では、受け入れ先の自治体が自衛隊と普段から交流していなかったこともあり、地元自治体との連携強化が大きな課題として浮かび上がり、地域の防災訓練などに自衛隊が参加するきっかけとなりました。

 2011年の東日本大震災では、陸海空の自衛隊を一元指揮する現場の統合司令部、「統合任務部隊(JTF)」が史上初めて編成されています。これにより自衛隊と受け入れ自治体との窓口が一本化され、活動がスムーズになった反面、今度は末端での地域ボランティアとの連携に課題を残しました。この教訓から、地域の防災NPOやボランティア組織と地元の部隊が、定期的に意見交換する機会を設けるようになっています。

 今回の能登半島地震における災害派遣では、大きな被害を受けた被災地に向かう主要な道路が1本しかなく、それが寸断されたことで部隊の展開が逐次的になってしまったり、過疎地で孤立する集落が発生し支援物資を人力で運ばざるを得なかったりといった課題が指摘されています。

 しかし、これまでと同じように、今回の課題も「経験値」として、フィードバックされるはずです。それを教訓に、自衛隊はさらに強靭な対応力をもつ組織へと変貌することは間違いないでしょう。

【了】

【災害派遣に戦車も!】バックミラーマシマシの災害派遣型74式戦車ほか(写真)

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Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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