歩道がカオス!“違法原付”解決の糸口は「道路を変える」? 新ルールもなお混迷 電動モビリティの理想と現実
制度はできた でも「走るのに適した環境がない」?
「モペット」と呼ばれるペダル付電動バイクの交通違反の摘発件数は、2023年には前年の3倍以上に急増。この状況を受け3月5日には、モペットが電源を停止した状態で走行しても「原付」に該当することを明確化する道交法改正案も閣議決定しました。
こうした違法走行の問題を根本的に解決するには、「自転車道の整備しかない」と鳴海社長は力を込めました。
20km/hで自転車道も走行できる特定小型原付は、鳴海社長をはじめ日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)などが提唱してきた理念を具現化したものといえます。モビリティを「速度と大きさ」で分類し直し、自転車と同じような速度で走る電動モビリティの走行環境として、車体の法整備とともに自転車道の整備促進を訴えてきたのです。
危険な違法走行は言語道断ですが、結局は、自転車も含めて低速モビリティの適切な走行環境を整備しなければ「どこを走ればいいの」状態が続くというわけです。
「ヨーロッパでは急ピッチで(既存道路の)車線を潰して自転車道をつくっています。潰さなくてもできます。本気で取り組むべきは道路政策」(鳴海社長)
楠田悦子さんも、自動車優先の道路整備に対し、「モノだけじゃなくて都市の構造を複合的に変えないといけない」と話しました。
鳴海社長は、特定小型原付の創設を「始まりにすぎない」と話します。「向こう50年くらいで街の在り方は変わり、道路も自動車が中心の整備から、人が中心になります。そこでパーソナルモビリティがようやく注目され始めています」と話します。
いわゆる「若者のクルマ離れ」は、クルマ離れではなく「所有離れ」だと鳴海社長。クルマの利便性は認めつつも、所有するには至らない、シェアで十分、でもやはり何か移動手段を個人で所有したい、そこで選ばれるのがパーソナルモビリティだといいます。一人で移動するのなら、1トン以上のクルマよりも、人間の体重より軽いパーソナルモビリティ――その効率の良さは、すでに学生などにも選ばれていると話しました。
ただ、glafitが実施した特定小型原付についてのアンケート調査では、3589人のうち特定小型原付の存在を「知っていた」と回答したのは28%にすぎず、そのうち、16歳から免許なしで乗れるようになったことを明確に「知っていた」と答えたのは37.8%という結果に。鳴海社長は「世の中にほとんど知られていない」状態だと話します。その認知度向上、交通ルールの周知徹底は、いま目の前にある高いハードルかもしれません。
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