ボーイング幹部「F-15戦闘機がマッハ3出した!」ホントかよ!? 世界の航空ファンがザワついたワケ

「圧倒的な速さ」こそロマンか?

 また、F-15はマッハ2以上となると「空力加熱」が大きな問題となります。機首先端のレーダードームやキャノピー(風防)などといった非金属部が耐熱制限に達することで、コックピット内に焼け焦げた匂いが漂うのだとか。そのため、マッハ2以上の高速状態を長く維持することはできず、マッハ2.3以上の速度を出す場合は、1分間の時間制限が課せられます。

 このように厳しい条件を複数クリアした場合にのみ、F-15はマッハ2.5を出せるのです。そのため、実戦配備されている普通の機体で、真夏に大量の武装を備えた状態だと、マッハ1.3さえも厳しくなるのが実態です。したがって日常的な訓練や実際の戦闘シナリオでは、最高速度という数値はほとんど意味を成さないとも言われています。

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F-15「イーグル」戦闘機は航空自衛隊でも多数運用している(画像:航空自衛隊)。

 結局、マッハ3発言をしたノボトニー氏は、わずか2日後には発言の訂正を行い、マッハ2.9と述べたことは誤りであるとしました。また、それとともに「設計上の制限はマッハ2.497である」と訂正したことで、この騒動は収束しています。

 かつて1950~60年代頃までは、戦闘機といえば熾烈な人類最速争いの最先端を行く乗りものでありました。しかし、1970年頃にMiG-25がマッハ3.2に達し頂点に君臨したことで競争は終わりを迎え、その後は半世紀にも渡って戦闘機の速度性能は「マッハ1をほんの少し上回る」ところで落ち着いてしまいました。

 そういったことを鑑みると、F-15EXのマッハ3発言が大きな反響を呼んだのは、航空専門家やファンらの潜在意識の奥底にあった、熾烈な速度競争を繰り広げた「黄金時代」への懐かしみ、またそうなってほしいという願望がロマン心を刺激したからだ、と言えるのかもしれません。

【了】

【8枚翼がポイント】NASAが使用した異形のF-15「イーグル」です(写真)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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