「F-35戦闘機で核使用OKに」それが意味する重大な転換点 日本には“有益”といえる理由

このたびF-35戦闘機での戦術核爆弾の運用能力が認証されました。これにより同機の導入を進めるNATO諸国では核兵器の共同運用が進むことになりますが、同機は日本も調達中です。F-35での核兵器運用は自衛隊にも影響を与えるかもしれません。

F-35Aで核兵器を使えるように

 2024年3月、アメリカ製のステルス戦闘機F-35A「ライトニングII」に関して、戦術核爆弾B61-12の運用能力が認証されたとの報道がありました。

 これによりF-35Aは通常兵器と核兵器の両方を任意に搭載し運用可能な、「複合対応航空機(DCA)」としての地位を確立したことになりますが、このことはNATOにおける核兵器の運用体制が大幅に拡充することにつながるだけでなく、将来、航空自衛隊のF-35Aに関しても運用の幅を広げるきっかけになるかもしれないのです。

 そもそもNATO(北大西洋条約機構)では、アメリカから核爆弾を借り受け核攻撃の意思を共有する「ニュークリア・シェアリング」を行っています。その参加国のなかでF-35Aを配備中または配備予定の国、すなわちアメリカ、オランダ、イタリア、ベルギー、ドイツの各空軍が、今回の認証によって順次核攻撃能力を獲得することになります。

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編隊飛行するアメリカ空軍のF-35A「ライトニングII」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。

 これまでB61シリーズを運用可能なDCAはF-16「ファイティングファルコン」、F-15E「ストライクイーグル」、「トーネードIDS」の3機種でした。ただし、F-16と「トーネードIDS」は新たにDCAの一角を占めることになったF-35Aへ機種更新される予定のため、将来的にはF-15EとF-35Aの2機種でNATOのニュークリア・シェアリングを支えていく予定です。

 こうしてF-35Aで運用できるようになったB61-12は、その出力を任意に変更することが可能という特徴を持っています。放出エネルギーは最小設定で0.3キロトン、最大時には50キロトンに達します。比較的低出力の核弾頭ですが、それでも広島や長崎へ投下された原爆が約15~20キロトンであったことを考えると、ひとつの都市に壊滅的ダメージを与えるには十分な威力を持っていると言えるでしょう。

 他方で、誘導爆弾として知られる「JDAM」に用いるGPS誘導キットの装着が可能であるため、貫通爆弾として使用した場合は、ほかの核兵器よりも付随する損害を抑えることができることから「心理的にも使いやすい」地中攻撃兵器にもなります。

 ちなみに、B61シリーズは「戦術」または「戦域」核爆弾と呼ばれますが、「戦略核兵器」との違いは威力ではなく射程距離で決まります。ただ、これは米露間における新戦略兵器削減条約に抵触しないという取り決め上の区分でしかないため、有事の際などに使用する場合は戦術核と言いつつも戦略的な意味合いを持つという点に注意する必要があります。

【どこに格納?】F-35Aが核爆弾を搭載した様子&投下の瞬間(写真で見る)

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