「F-35戦闘機で核使用OKに」それが意味する重大な転換点 日本には“有益”といえる理由
空自もF-35を増備中、ということは…
B61-12およびこれを搭載したDCAのおもな目的は、第1に「核抑止」、第2に「拡大抑止」です。
「核抑止」は、相手の核攻撃に対して確実に核兵器で報復攻撃ができる能力を持ち、相手に核攻撃を躊躇させることを意味します。「拡大抑止」とは、核抑止が破られ相互に核兵器の投げ合いが生じた場合、最悪の状況、すなわち人類の文明崩壊まで考えられる無制限のエスカレートを防ぐことです。
こうしたことを鑑みたとき、B61-12なら出力調整が可能で「過剰な報復」になりにくく、かつ地中貫通能力に優れ相手の核戦力に限定した攻撃に適しています。一方、F-35Aはステルス性が高く、防空網奥深くへ長距離を進出する能力に優れているため、その目的に適しています。
また「ニュークリア・シェアリング」によってB61-12を受け入れた国にとっては、アメリカの「核の傘」に対する信頼性への疑念、すなわちアメリカに対する「核攻撃を受けたベルリンの報復を行えばニューヨークが再報復される」といったリスクを回避させ、より高い確度で報復を行える利点があるでしょう。
日本は世界で唯一の被爆国として「非核三原則」を基本政策としていますが、一方でアメリカの同盟国であり、現実にはアメリカの核の傘の下で核抑止の恩恵を受けています。
現在のところ日本が核武装するという議論はありませんが、もし日本が核武装を決断した場合、航空自衛隊でF-35Aを導入・運用しているため、最も確実で最速の手法は「ニュークリア・シェアリング」によるB61-12の導入とF-35A配備飛行隊のDCA化だと言えます。
F-35Aはアメリカ空軍、同盟国の空軍を問わず同一のハードウェアとソフトウェアで統一されているため、航空自衛隊機のF-35AをDCA任務に対応させること自体は比較的容易に行えるでしょう。
その点で、実は航空自衛隊にF-35Aの飛行隊が増えているというのは、日本が核武装の決断をくださなくとも、ロシアや中国、北朝鮮にとって日本が潜在的に核攻撃能力を保持できると判断させるに相応しい装備だといえます。そのように考えると核抑止、戦争回避としては非常に有益な「防衛装備」と言えるのかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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