「戦闘機パイロット不要論」はあり得ない!? もはや有人機とドッグファイトする無人機どう使う 見えてきた「近未来の戦い方」

将来の戦闘機パイロットはマルチタスク必須?

 今回、展示されていたKAIのMUM-Tコンセプトから感じたのは、その目的が単純に戦闘機を無人化するというものではなく、無人戦闘機を活用して有人戦闘機の能力も拡張しようという点です。

 同社の計画では、開発はフェーズに分けて進められ、2020年代は小型のAAPとMUM-Tの技術開発を進め、2030年頃より無人戦闘機の開発を開始する模様です。両機の実用化は2037年頃を目指しており、その後は付随する技術を第6世代戦闘機の開発に繋げていくと考えられます。

 このような無人戦闘機とMUM-Tの開発については、他国の戦闘機開発でも同様に進められています。アメリカ空軍がF-22「ラプター」戦闘機の後継として開発しているNGAD(次世代航空支配)や、日本がイギリスとイタリアと共同開発を進めているGCAP(グローバル戦闘航空プログラム)でも、無人機と連携するために必須なMUM-Tの能力が盛り込まれています。

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現在開発中の韓国国産戦闘機KF-21と無人機。模型は単座型だが、無人機との連携は複座型が担当するという(布留川 司撮影)。

 今後、無人戦闘機は着実に開発が進み、運用も始まることは間違いないでしょう。しかし、それは既存の有人機を代替するものではなく、補完し合うものになるのが濃厚です。より効果的な運用を目指すと、無人機ばかりになるのではなく両方を併用する形になりそうです。戦闘機パイロットは、無人戦闘機の運用ノウハウも獲得する必要があります。

 すなわち、無人戦闘機が普及しても、戦闘機乗りがいなくなることはなさそうですが、代わりに戦闘機パイロットには、自機の操縦だけでなく、無人機や各種システムを使いこなすオペレーター的な役割が要求されることになります。そう考えると、戦闘機パイロットは、今まで以上にマルチタスクな能力が必須になると言えそうです。

【了】

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Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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