「戦車を発明した国」が戦車廃止へまっしぐら? 抜け出せない“平和ボケ” 欧州新型戦車のゆくえ

前倒しされたチャレンジャー3開発

 しかしチャレンジャー2LEPはイギリス国内では不評でした。国産戦車技術はロストテクノロジー化していることが明確となり、予算オーバーと計画遅延で議会からは追及され、外国戦車を輸入せよという意見も出されました。

 それでもイギリス国防省は2021年にチャレンジャー3と命名してプログラムを承認します。なんとかイギリス戦車の面目だけでも保ちたいと考えたのでしょうか。

 2024年5月、イギリス国防省はドイツで射撃試験を成功裏に実施し、5000mでも目標に命中するという並外れた長距離射撃精度を示したと発表しました。しかしこれを実現したのはドイツ製ラインメタルL55A1 120mm滑腔砲です。国内には施設がないので、試作車テストさえもドイツに持ち込まなければならないというのがロストテクノロジー化したイギリス戦車の現実です。

 228両保有するチャレンジャー2のうち148両がチャレンジャー3に改修され、2027年には初期作戦能力獲得する計画でしたが、風雲急を告げる欧州情勢を受けてイギリス陸軍の近代化を加速するため、2025年に前倒しされました。そして2030年代には将来戦車に交代することになっています。

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チャレンジャー2の120mm主砲。砲身内に溝が切られたライフル砲であることがわかる(Cpl Ross Fernie RLC, OGL v1.0OGL v1.0, via Wikimedia Commons)。

 次の問題が、この将来戦車が何になるかです。MGCSを主導するドイツ、フランス政財界の思惑は必ずしも一枚岩ではなく、分裂する可能性も十分に考えられます。そうなった場合イギリスはどういう選択を迫られるのか。いずれにしても2030年代以降のイギリス戦車戦力を担うのはイギリス国産戦車でないことだけは確かです。

【了】

「ばかでかくて、すごくうるさい」戦車とは(写真を見る)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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