日本を代表する戦艦=「大和」じゃない!? アメリカで最も有名な艦は 旧式だけど「すごく速い」

なぜ「金剛」はアメリカに恐れられたのか

 軍縮条約で「比叡」が練習戦艦に改装され、舷側装甲と第3主砲塔撤去、機関減少で公称18ノット(33.3km/h)となりましたが、のちに昭和天皇のお召艦となっています。艦齢が古い金剛型は、軍縮条約で代替艦が建造される予定でしたが、条約破棄でお蔵入りに。練習戦艦「比叡」も含めて第2次改装が行われます。

 第2次改装では主砲仰角の引き上げと91式徹甲弾の使用で、主砲射程が35.5kmとなり、砲身動力も強化したことで実用的な主砲全門の斉発(一斉射撃)が可能となります。舷側装甲も、裏にある水平装甲傾斜部に70~102mmが貼り足され、戦艦主砲には不足であるものの強化されました。

 水平装甲は弾薬庫が102~127mm、機関部に76mmが貼り足され、弾火薬庫の水平装甲は格上の40.6cm砲に対しても有効な防御力を持ちました。機関も換装され、最大速力は30ノット(55.6km/h)となります。射撃指揮装置なども換装され、特に「比叡」は大和型戦艦のテストベッドとして、同型艦と雰囲気が異なる艦橋となっています。

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1944年6月のマリアナ沖海戦で、アメリカ海軍の空母艦載機から猛攻を受ける戦艦「金剛」(画像:アメリカ海軍)。

 太平洋戦争へ突入すると、旧日本海軍は金剛型を、空母の護衛やガダルカナル島の飛行場砲撃に使用します。アメリカ側は、速力の速い新型戦艦を空母の護衛に付け、万が一の水上遭遇戦で不利にならないように対応しました。アメリカ側の資料では、金剛型の速力を「恐らく30ノット(55.6km/h)の発揮が可能」と注記して、その高速による夜戦投入を警戒しました。

 アメリカでは「金剛」は、「ガダルカナル島を砲撃して海兵隊を絶望させ、サマール沖海戦で多くの被害を与えた艦」と認識されており、「YAMATO」(大和)ではなく「KONGO」が日本戦艦を代表する存在と評価されています。

【了】

【貴重な1枚!】これが「巡洋戦艦」時代の金剛です

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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