ドイツ生まれの「最新ニコイチ戦車」どこがイイ? 実はメリット盛り盛りの“超コスパ良しタンク”だった

主砲交換も段階的アップグレードもOK

「パンター・EVO・アップグレード」は単純に砲塔を付け替えるだけでなく、車体も含めて、各種のカスタマイズされたアップグレードが可能だそうです。たとえば、主砲は現在主流の120mm砲だけでなく、次世代戦車で普及していくと目される新たな130mm砲に交換することも可能です。「パンター・EVO・アップグレード」を導入した国は、既存の120mmを運用しつつも、周辺情勢を見ながら新型の130mm砲へと交換することができます。また、使われているシステムは完全なデジタル化がされており、さらにNGVAと呼ばれるNATO規格のモジュラー式オープンシステムで設計されているため、定期的な更新や改良も可能だといいます。

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「パンター・EVO・アップグレード」。レオパルド2を運用するすべての国が潜在的な将来の顧客となる(画像:ラインメタル)。

 2024年7月現在、ドイツとフランスは双方の主力戦車の後継車両開発をMGCS(陸上主力戦闘システム)計画の名前で共同に進めており、この計画には欧州域内のNATO(北大西洋条約機構)諸国も注目しています。そのため、開発される新戦車は2か国だけでなく、他国にも採用される可能性が高く、もしその国の数が大幅に増えたなら、次世代のNATO標準戦車になる可能性も秘めていると言えるでしょう。

 しかし、開発計画は大きく遅れており、実際に配備されるのは2030~35年とされるため、MGCS完成までの繋ぎとなる戦車を各国は求めています。ラインメタル社にとしては、そこにKF51の商機を見出しているようで、その「繋ぎ用戦車」に、導入しやすい「パンター・EVO・アップグレード」というオプションを提示することは、自社製品のユーザーを増やすだけでなく、将来のMGCS計画に対して、一定の影響力を発揮できることにも繋がります。

 KF51自体はいまだ開発中ですが、2023年12月にハンガリーが次世代戦車として共同開発の契約を締結。さらに最近の報道では、イタリアが「レオパルト2」の導入を取りやめ、代わりにKF51の導入を検討しているとも伝えられています。今後、どのような国でどんな形のKF51が導入されるかはわかりませんが、こうしたことを鑑みると、近年中にKF51が配備される可能性は決して低くはないようです。

【了】

【後ろ姿は?】ドイツ生まれの「ニコイチ戦車」をイッキ見(写真)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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