世界最速のプロペラ機「羽2枚重ね」なぜ? 実は理にかなっていたワケ 同じ発想はヘリコプターにも

飛行機以外にヘリコプターでも

 ただ、二重反転プロペラにもメリットがあります。出力を効率よく使えるためプロペラの直径を小さくできることです。

 Tu-95に関しては、当時のソビエト連邦共産党中央委員会が要求した性能を満たす場合、ひとつの軸に1枚のプロペラだと直径が7mを超えてしまうという結果がでました。この大きさのプロペラでは、さすがの大型4発機でも邪魔です。
 
 さらに当時、ジェットエンジンはまだ燃費が悪く、大型戦略爆撃機に搭載するには許容できない範囲だったため、プロペラの直径を小さくできる二重反転プロペラが採用されることになりました。

 大戦後の旧ソ連では、大型機が飛行する際の安定性を確保するために、軍民問わず様々な機体で二重反転プロペラが採用されています。前出のTu-95以外では、同機をベースに開発された旅客機型Tu-114があるほか、An-22やAn-70といった輸送機でも二重反転プロペラが用いられています。

 戦後、二重反転プロペラを採用したケースはイギリスやアメリカでも見られます。たとえば、製造国イギリスを含め「世界で最も醜い機体」と呼ばれた空母搭載用の対潜哨戒機、フェアリー「ガネット」も二重反転プロペラを搭載しているほか、民間機だとレース機などで多用されており、1963年から2023年まで行われた「リノ・エアレース」では、民間に払い下げられたP-51「マスタング」戦闘機を、エアレース仕様に改造する際にスピードアップを図る目的で二重反転プロペラへと換装した機体も多々ありました。

 なお、飛行する際の力を打ち消し合う仕組みは、飛行機だけでなくヘリコプターにもあります。ヘリコプターは、メインローターと呼ばれる大型の回転翼で揚力と推力を生み出していますが、回転している以上、プロペラ機と同じく常に逆方向へと機体を回転させようとする力が働いています。そのため、それを打ち消すための逆向きに推力を働かせるローターがほとんどの機体で用意されています。

 通常はヘリの尾部についている「テールローター」が一般的ですが、二重反転ローター式という構造の機体では、メインローター部分に上下逆回転するローターがあり、これらが別方向に回ることで機体の姿勢を維持しています。こうすることでテールローターを不要にしています。

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アントノフ製輸送機An-70の二重反転プロペラ(画像:O・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体)。

 ちなみに『ドラえもん』の「タケコプター」を現実で再現する場合、ドラえもんが逆方向に毎秒4.7回転して目を回してまうと、作家の柳田理科雄さんが書いた『空想科学読本』シリーズでは紹介されています。

【了】

【う! これはダサい…】「世界で最も醜い機体」といわれるイギリス機って?(写真)

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コメント

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1件のコメント

  1. 勉強不足。
    Wiki記載を参照したものだと思われるが、その記載は記述が不足している。

    2重反転プロペラの最大の目的は、
    エンジン出力が大きくなると、有効な推進力に変えるためにはプロペラの直径を大きくするか翼面を大きくするのだが、最大サイズ(直径も翼面積も)には限界がある。
    限界を超えるとペラの先端から気流が剥離し、空転状態になり、推進力にならなくなる。
    それを回避するために2重のプロペラにして回転速度=先端速度を抑え面積を広げてエンジン出力を有効な推進力に変えるため。

    乗り物の専門を名乗るなら、引用する内容もきちんと検証しましょう。