いまも重宝される“旧日本戦艦の残骸”とは 戦時中に爆沈→わざわざ引き揚げられた理由

終戦時、日本海軍の戦艦は「長門」を残して全ての艦が失われていましたが、その1隻である「陸奥」は戦後、海の中にいながら、意外な活躍の場を得ることになりました。

放射性物質の影響を受けていない鉄を“産出”

 

「陸奥」のトレードマークである、40cm砲は複数が引き揚げられ、「陸奥」の生まれ故郷である神奈川県横須賀市のヴェルニー公園や長野県東筑摩郡の聖博物館、広島県の呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)などに展示されるようになりましたが、主砲とともに引き揚げられた船体などの鉄は、展示品ではなく違う形で再利用されています。それは、放射線測定装置の遮蔽材(しゃへい材)としてです。

 

 実は、史上初めて核実験が行われた1945年7月16日以降に作られた鉄には、空気中に拡散されたコバルト60などの放射性物質がわずかに含まれているため、微量の放射線を検出する機器の製造には向かない素材となっていました。

 逆に言うと、それ以前に造られた鉄には、そうした検出を困難にする物質が含まれていないということ。そこで、戦時中などに沈んだ艦艇が大きな価値を持つようになったのです。しかも戦艦なら防御力を高めるために、かなり厚みのある鋼鉄が用いられています。その厚みが、遮蔽材で使うのに適しており、結果「貴重な鉄素材」がまとまった量で手に入るとして脚光を集めるに至ったといえるでしょう。

 このときサルベージされた「陸奥」の鉄は通称「むつ鉄」と呼ばれ、日本全国の大学、研究機関、医療機関などに売却され、内部被曝を調べる「全身測定装置(ホールボディーカウンター)」やγ(ガンマ)線測定装置などの素材として使われました。

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横須賀市のヴェルニー公園に設置された「陸奥」の主砲砲身。爆沈後に引き揚げられた(乗りものニュース編集部撮影)。

 実は21世紀に入っても「むつ鉄」は活躍しています。2011年の東日本大震災により発生した福島第1原発事故後の復興作業では、現地で採取した土や水の放射線量を測定するために金沢大学にあった測定器が活躍しましたが、これはまさに「陸奥」から回収した鉄で作られています。

 このように、戦艦としての実績こそ姉妹艦の「長門」やほかの戦艦と比べると芳しくなかったものの、「陸奥」は戦後に大きな働きをしたといえるでしょう。

【了】

【内部の素材に使用】これが「むつ鉄」を使った測定器です(写真)

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ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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