「寿命半分」なのに30年! 賛否分かれたJR東日本の“歴史的名車” その目論見を振り返る
国鉄分割民営化後の“新生”JR東日本が画期的な次世代車両として製造した209系電車。「寿命半分、重量半分、価格半分」というコンセプトで登場しましたが、今も運用が続いています。当初の目論見はうまくいったのでしょうか。
賛否あれど革新的だった209系
※本記事は『JR東日本 脱・鉄道の成長戦略』(枝久保達也著、河出書房新社)の内容を再編集したものです。
国鉄民営化を象徴する車両のひとつがJR東日本の209系電車です。現代の通勤形車両の基礎を作り上げた歴史的名車ですが、一方で「寿命半分、重量半分、価格半分」という意欲的なコンセプトには賛否があります。
鉄道車両の一般的な寿命は、在来線であれば概ね30年から40年、中には50年近く走る場合もありますが、209系が登場してから30年近くが経過した今、目論み通りだったといえるのでしょうか。
あまりに大胆な「半分」というコンセプトを決定したのは当時、副社長だった山之内秀一郎氏です。山之内氏は2008年の著書『JRはなぜ変われたか』(毎日新聞社)で次のように述べています。
「技術とデザインの変化の激しい時代に、いくらなんでも30年近く使うというのは、どう考えてみてもおかしい。そこで、鉄道車両の寿命を半分にできないかと考えた。だがそれでは経理部門から一蹴されることは目に見えている。それならと今度は車両の価格も半分にできないかと考えた。そうすればかかる総経費は同じで、修繕費が低下するだけ経費の削減になる」
山之内氏は自動車のモデルチェンジを引き合いに出し、鉄道車両の代わり映えのなさを指摘します。209系を語るとき、寿命半分は価格半分を実現するための要件と説明されることがありますが、山之内氏の本心としては寿命半分こそが出発点だったのです。
国鉄時代の車両製造は、国鉄が作成した基本設計に沿って、各メーカーが同じものを造っており、高コスト体質の要因となっていました。これに対して209系ではJR東日本がグランドデザインを設定し、大手車両メーカー5社で開発コンペを行い、コスト削減のアイデアを募りました。結果的に川崎重工業と東急車輛製造の2社が受注しましたが、製造方法はあえて統一せず、各社に任せることでコスト削減を図りました。
とはいえ、さすがに新造費用だけで価格半分は困難でした。そこで新造費用にオペレーション費用、保守費、廃車費用など車両の一生のうちにかかる費用を加えた「ライフサイクルコスト」をミニマム化し、実質的な費用を半分にすることにしました。
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