「日本人=スポコンでしょ!」ハリウッドが描く人種の“自動車カルチャー格差”とは? やっぱりイーストウッドは巧かった!?

『グラン・トリノ』なら人種による自動車文化の差が一目瞭然!

 このような、アメリカの人種とモーターカルチャーの関係を1本の映画の中で描いているのが、クリント・イーストウッドが監督した『グラン・トリノ』です。

 イーストウッド演じる主人公のウォルト・コワルスキーは、長年フォードの工場で働いてきた孤独な白人の高齢者です。彼の唯一の宝物は、1972年型フォード「グラントリノ」でした。そんな彼の隣人となったのが、ベトナムの少数民族「モン族」の少年タオを中心とする一家で、彼らとの交流によってコワルスキーが心を開いていくというのが、この映画のストーリーです。

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『アメリカン・グラフィティ』でポール・ル・マット演じるジョン・ミルナーが愛用するデュース・クーペの同型車。フロントフェンダーの有無など若干の差異はあるが雰囲気は近い(山崎 龍撮影)。

 コワルスキーが愛する「グラントリノ」は、排ガス規制と安全基準の引き上げで終焉を迎えた最終世代のマッスルカー(心臓にパワフルなV8エンジンを搭載した2ドアの中・小型車)です。この種のクルマは、1960~1970年代にかけて白人男性が特に好みました。

 一方、タオをギャングの仲間に勧誘する従兄弟のフォンは、巨大なリアウイングを備えたスポコン風の5代目ホンダ「シビック」に乗っています。また、物語中盤でタオの姉スーに絡んできたフォンたちと対立する黒人ギャングのメンバーが乗っていたのは、1964年型シボレー「インパラ」のローライダーでした。

 近年、日本でも毎年のようにアメリカンモーターカルチャーのイベントが開催されていますが、アメリカ本国のイベントとは異なり、国内のイベントにはHOTROD、ローライダー 、スポコンなどアメリカ発祥のカスタムカーがジャンルの垣根を越えてエントリーしています。しかしながら、こうした光景は人種とモーターカルチャーとの結びつきがない日本ならではのもの、と言えるでしょう。

【了】

【画像】映画『グラン・トリノ』の一方の主役!? これがフォード「グラントリノ」です

Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)

自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、カワサキZX-9R、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか

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