日米対決!?「世界一長い生産ラインのクルマ」とは? “バブル時代”ならではの珍車でしょ!

延べ地球半周分の「生産ライン」を通った国産車

 オーテック・ザガート「ステルビオ」は、1990年に限定販売されたF31型「レパード」の主要コンポーネンツを使用して製造された高級パーソナルクーペです。企画したのはオーテックジャパンの初代社長にして「スカイラインの父」として知られる桜井眞一郎さんでした。

「ステルビオ」の製造は、日産の村山工場(東京都武蔵村山市、現在は閉鎖)の生産ラインで流れていたF31型レパードをベアシャーシの状態で抜き出し、それをオーテック社の工場で全長を300mm短縮。そこからワイドボディに対応するためのドア周り改修やサイドステップ周りの強化、ブレーキやサスペンションの変更、エンジンのチューニングなどの作業を行ったうえで海路イタリアへと送ります。

 そして、イタリアのザガート工場でボディの架装と内外装の組み付けを行ってから、再度日本へと船で送り返して、オーテックの工場で電装系などの組み付けと最終仕上げを行っていました。

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日産の子会社オーテックジャパンとカロッツェリア・ザガートのコラボで生産されたオーテック・ザガート「ステルビオ」。エラのようなボンネットの張り出しは桜井眞一郎さん発案の斬新なフェンダーミラー。ただし視認性は劣悪(山崎 龍撮影)。

 すなわち、生産途上の「ステルビオ」の車体は日本~イタリア間を往復するわけですから、その距離は「アランテ」を大きく凌ぐ1万9000km以上。地球半周分の距離を経て完成する文字通り「世界最長の生産ライン」で作られたクルマだといえるでしょう。

 これだけ大変な手間と時間をかけているため「ステルビオ」の製造コストは極めて高くつき、その分のコストを価格に転嫁した結果、日本国内での販売価格は1870万円と、当時、新車販売されていた「フェラーリ328GTS」よりも300万円も上回るプライスとなっていました。

 いくらバブル期の真っ只中とはいえ、国産車ベースの改造車にそこまでの大金を払う人はそうそういなかったようで、200台の生産予定のうち実際に製造・販売されたのは約半分の100台強に留まったようです。おそらく、これほどの長い生産ラインで作られるクルマは今後、登場することはないと思われます。

【了】

【全然ちがう】これが日伊合作「ステルビオ」のベース車、日産「レパード」です(写真)

Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)

自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、カワサキZX-9R、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか

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