唯一の現役車が引退間近 その理由は「路線延伸」? 全国どこでも見られた「キハ20系」最期のとき
延伸で編成増 ネックとなる性能差
キハ205は水島臨海鉄道時代にクーラーを取り付けていたので、湊線キハ20形唯一の冷房車として、新製車のキハ3710形と混在しながら年間を通して活躍しました。しかし新製車が登場するたびに僚友が廃車され、2017(平成29)年には水島臨海鉄道のキハ20形が引退すると、湊線だけでなく全国で唯一のキハ20形となりました。
近年は勝田~那珂湊間の区間運用に充当されていましたが、JR東海のキハ11形(2代目)が入線する前後から運用がめっきり減りました。吉田社長は続けます。
「もう予備車なのです。加減速などほかの車両との性能差もあり、ダイヤ上のネックになります。大きなイベントで全車両動かすほど必要に迫られた時以外は走らないですね」
近年は那珂湊駅構内の車両基地で佇む姿が多かったキハ205は、製造から約60年経過し、機関部はまだ良好ながらも、戸袋窓にドアが擦ってしまい、床もベコベコになるほど車体がへたれてきました。現役の新製車両とは性能差も異なり、要である運行ダイヤに支障をきたします。営業車両としてギリギリのコンディションのなか、なんとか予備車として走れる状況に、満身創痍という言葉が過ります。
ところで、湊線は阿字ヶ浦駅からひたちなか海浜公園方面への延伸計画があり、工事認可が降りる段階まで計画が進展しています。その前段階として、2024年9月にJR東日本からキハ100形(100‐39)が搬入されました。
「延伸の際には最大で3両編成の運行となって保有車両も増やすため、同系列で編成を組めるものに統一するのです」と吉田社長。性能差があって単独運用しかできないミキ300形とキハ205は、延伸を見込んだ増備のため、そのうち引退という判断となりました。
現役最後のキハ20形がラストナンバー車というのは、偶然とはいえ何かの巡り合わせに思えます。しかし機械の命も永遠ではありません。2024年秋時点でキハ205はチャーター運行をしており、ツアーや鉄道ファン有志での引き合いが結構あるようです。
【了】
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
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