絶滅近し? 国鉄が「JR北海道と四国のために」つくった車両とは 実は“席だけ新幹線”も!?

国鉄の分割民営化の際、新たに発足するJR北海道と四国は経営困難が予測されました。国鉄はその両社向けに、最後の一般形気動車キハ54形を新製します。どんな車両なのでしょうか。

温暖地用と酷寒地用が存在「キハ54形」とは?

 国鉄分割民営化が行われる直前の1987(昭和62)年、国鉄の債務は37.1兆円という莫大な金額に達しました。このため新規投資が抑制されてはいましたが、その一方でキハ20系列、キハ58系列などの国鉄型気動車は、この時点で多くが経年20年程度に達していました。

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JR北海道のキハ54形気動車(安藤昌季撮影)。

 分割民営化で誕生するJR旅客6社のうち、特に「三島会社」と呼ばれるJR北海道、JR四国、JR九州は当時から経営が危ぶまれていました。このため、国鉄は「三島会社」の経営基盤を強化すべく、国鉄最終年度の予算で新会社向け気動車を新製しました。JR四国・九州向けのキハ31・32形と、JR北海道・四国向けのキハ54形、JR北海道向けの特急形キハ183系500・1500番台、JR四国向けの特急形キハ185系気動車です。

 キハ54形は温暖地向けの0番台が12両製造されJR四国に、寒冷地向けの500番台は29両が製造されJR北海道に投入されました。どちらも全長21mで、両運転台付きの2エンジン搭載車両でした。0番台は四国の急勾配区間に対応するために、500番台は冬季に排雪しながら走行するために、それぞれ高いエンジン出力が求められたのです。

 気動車で錆びにくいステンレス車体の採用は、1963(昭和38)年のキハ35形900番台以来でしたが、同じころの205系電車から導入された軽量ステンレス車体を採用しました。ただ、軽量化効果はそれほどではなく、従来型の2エンジン車であるキハ52形の35.5~36.6tに対して、キハ54形は37.2~38.7tとむしろ重くなっていました。それもエンジン出力は、2基360馬力だったキハ52形に対して、2基500馬力と強化されていたので、走行性能ではキハ52形を上回り、電車に負けない加減速性能を備えました。

 しかし、キハ54形のエンジンの液体変速機や台車、自動空気ブレーキなどは、キハ20形など従来型気動車の再用品だったため、最高速度も95km/hと従来型の国鉄形気動車と同じでした。採用されたコイルバネ台車も20年以上前のものです。このあたりからも国鉄の財政難が伝わってきます。

【写真】え、マジだ 廃車された0系新幹線の座席を備えたキハ54形

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