「21世紀のコンコルド」の試験機、小さすぎ!? なぜここまで“本番用の機体”と設計違うのか エンジン数すら揃ってない!

なぜここまで設計が違くても大丈夫?

 XB-1の最高速度はマッハ2.2(約2717km/h)の予定で、搭載されているエンジンはJ85という1960~80年代の軽量戦闘機F-5に使われたものを積んでいます。もともと“標的用ドローン”のために開発されたJ85の推力はさほど高くありません。

 つまりXB-1は、今後作られるであろう「オーバーチュア」の試作機と全く異なる限られた目的でつくられたといえるでしょう。そのため、XB-1は速度など必要最低限の要求を満たせば、それ以上の性能を必要としないのです。XB-1のエンジン数が「オーバーチュア」より1基少ないのも、必要最低限の性能を確保しつつ、開発コストを抑えるため、と推測できるでしょう。

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ブーム「オーバーチュア」のコクピットシミュレーター(清水次郎撮影)。

 XB-1のような限られた目的のテスト機において、実際に計画する機体と設計が異なるのは、過去にも戦闘機を中心にありました。たとえばスウェーデンでは「ドラケン」戦闘機をつくるさいに、サーブ210「リルドラケン」という小型機を1952年に初飛行させて、「ダブルデルタ」と呼ばれる主翼平面形の特性を探っています。日本でも次期戦闘機開発へ向けて、ステルス機能を蓄積するなどの目的で製造されたX-2も、こうしたテスト機に当たると言えるでしょう。

 航空機は「実際に飛ばしてみなければ分からない」といわれ、コンピューターのよる設計技術が進歩した今も、新型機開発において設計完了後にさらなる試行錯誤があるのは、いわば当たり前です。XB-1はこれを裏付けるもので、ブームは自身で実際の飛行データを採取・蓄積し、「オーバーチュア」の完成度を高めようとしているのだと想像できます。

【了】

【画像】試作機とだいぶ違う! これが「21世紀のコンコルド」完成版です

Writer: 清水次郎(航空ライター)

飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。

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