「プロペラ機なんて過去のもの」にならなかったワケ 現役時代は不遇“遅すぎた軍用機”が築いた礎

「ターボプロップも検討するよ」くらいで始まったワイバーンの開発

 ワイバーンの開発は、ウェストランド社独自の計画でした。その頃、イギリス航空省はロールスロイスの液冷ピストン・エンジン「イーグル」を搭載する長距離艦上戦闘機の仕様を要求していました。それにはガスタービンを使用するターボプロップ・エンジンの搭載も視野に入れていました。

 1920年代から構想があったターボプロップ・エンジンは、、ジェット・エンジンより実用化が遅れました。イギリスで初めてターボプロップ・エンジンの航空機が飛行したのは、終戦間もない1945(昭和20)年9月でした。この時は開発中のロールスロイス「イーグル」ターボプロップ・エンジンを、ミーティア戦闘機に搭載して飛行しています。

 ウェストランド社では「イーグル」エンジンで二重反転プロペラを駆動する試作機を、1946(昭和21)年12月に初飛行させます。その後、この機体はテスト飛行の事故で失われました。さらに「イーグル」の供給が見込めなくなり、ロールスロイスの新たなエンジン「クライド」あるいはアームストロング・シドレーの「バイソン」に変更して試作機の開発が続きます。

 こうして、「クライド」を搭載した試作機が1949(昭和24)年1月に、「バイソン」を搭載した試作機が3月に飛行します。ところがエンジントラブルや性能を十分に発揮できませんでした。

 この間、「クライド」搭載の試作機はロールスロイスがエンジン開発を断念して中止に、「バイソン」を搭載した試作機は3年かけて調整とテスト飛行を重ね、ようやく1952(昭和27)年に就役の準備が完了しました。

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魚雷を吊り下げたファイアブランド雷撃機。ワイバーンはこの後継機に位置づけられる(画像:パブリックドメイン)。

 こうしてワイバーンの量産機が1953(昭和28)年5月、イギリス海軍第813飛行隊に配備されます。最初の機体は空母ではなく基地航空隊でした。

【2枚プロペラずらり!】空母に並ぶ「ワイバーン」(写真)

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