「プロペラ機なんて過去のもの」にならなかったワケ 現役時代は不遇“遅すぎた軍用機”が築いた礎

戦後普及したターボプロップ・エンジン。その黎明期に開発された汎用艦上攻撃機「ウェストランド・ワイバーン」は、レシプロ機からジェット機への移行期に不遇な運命をたどりましたが、航空史において再評価されるべき役割を果たしました。

機体真っ二つ! 幸先悪い運用開始に

 ワイバーンは20mm機関砲4門、魚雷1本または爆弾を最大3000ポンド(1361kg)、ロケット弾16発を搭載し、最高速度616km/hの汎用機でした。しかし、ワイバーンが部隊配備される前に勃発した朝鮮戦争(1950~53年)では、すでに軍用機がプロペラ機からジェット機へと入れ替わり始めていました。イギリス空軍も第2次世界大戦終結後に、戦闘機をジェット化する方針を打ち出していました。

 そんな状況で第813航空隊に配備された翌年9月、空母「アルビオン」でのワイバーンの運用が始まった直後に事故が発生します。発艦に失敗したワイバーンが艦首の前に不時着水し、機体が真っ二つに切断されたのです。幸いパイロットは水没しかけた機体から射出座席で無事に脱出したものの、幸先の悪い運用開始となりました。

 1956(昭和31)年のスエズ危機においてワイバーンは実戦に投入され、空母「イーグル」から79回の出撃を行いました。結局、完成した機体は124機のみで、スエズ危機から間もなく退役しています。試作機の段階から退役まで39機(撃墜2機)が失われ、13名が死亡した事故の多い機体、という嬉しくない評価を残してワイバーンはその生涯を終えました。

 遅すぎた軍用機(それとも早すぎた)ワイバーンはこうして消えていきましたが、ここで実績を積んだターボプロップ・エンジンはその後も生き延びました。

 ワイバーンで「イーグル」が採用されなかったロールスロイスは、1948年に新たなターボプロップ・エンジン「ダート」を完成します。ダートは民間旅客機用に採用され、1987年まで長きにわたり生産されました。

 ターボプロップはジェット・エンジンで使われるタービンで、プロペラを回すと同時に電力も生み出します。効率よく大きな推進力が得られので燃料消費が低く、レシプロ機に比べて費用対効果に優れています。そのため、いまでもターボプロップを搭載する旅客機や大型軍用機は少なくありません。長く続くターボプロップ・エンジンの歴史のなかで、ワイバーンはその礎となったといえるでしょう。

【了】

【2枚プロペラずらり!】空母に並ぶ「ワイバーン」(写真)

Writer:

軍事雑誌や書籍の編集。日本海軍、欧米海軍の艦艇や軍用機、戦史の記事を執筆するとともに、ニュートン・ミリタリーシリーズで、アメリカ空軍戦闘機。F-22ラプター、F-35ライトニングⅡの翻訳本がある。

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