誰が作った?「へんてこゼロ戦」映画やエアショーで大活躍! じつは自衛隊との数奇な縁も
日米戦を描いた戦争映画『トラ・トラ・トラ!』には、日本の零戦役として数多くの「実物の飛行機」が登場しています。これらは、傑作練習機T-6「テキサン」を改造して用意されましたが、中には日本の自衛隊から返還された機体も含まれていたそうです。
故・千葉真一の「愛機」にも
こうして、それまでの塗装だけで日本機に化けていた各種プロペラ機とは異なり、本格的に零戦らしく改造されたT-6は、「テキサン・ゼロ」の愛称で呼ばれ、あえて区別されるまでに至っています。
しかも、『トラ・トラ・トラ!』で銀幕デビューを飾ったあとも、その外観ゆえにほかの映画などにたびたび出演しており、代表的なところでは1976年の『ミッドウェイ』、1980年の『ファイナルカウント・ダウン』、1987年の『太陽の帝国』などでその雄姿を見せつけています。
その後も、1992年の『エイセス/大空の誓い』ではアクション俳優の故・千葉真一(サニー千葉)が演じる日本人パイロット「堀越」の愛機として登場。また2001年の『パールハーバー』では、飛行可能な実物の零戦と「共演」まで果たしています。
もちろんそれだけでなく、アメリカ各地で開催されるエアショーにも零戦役として、たびたび「出撃」。P-51「マスタング」やF4U「コルセア」といったアメリカ製の傑作戦闘機と模擬空戦を行っています。
すでに誕生から60年近く経つ「テキサン・ゼロ」ですが、いまでも日の丸を輝かせながら元気に飛んでいます。これなどはベストセラー機がベースのため、補修部品が潤沢にあり、比較的安価に維持整備が可能というメリットの恩恵といえます。本物の零戦ではこうはいきません。
これからも、「本家」の代わりに空を駆け抜け、私たちを魅了してくれることでしょう。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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