退役したけど引退してない!? 米軍も驚かせた日本戦車の野心作 「74式」を振り返る

2024年3月に全車が退役した陸上自衛隊74式戦車。しかし2025年度の防衛省概算要求からは、まだ残るのではないかとも読み取れます。日本独自の機能を持ち、半世紀にわたって配備された74式は、どんな戦車なのでしょうか。

M1エイブラムスの試作車を上回った加速力

 当時の第2世代主力戦車の思想では、対戦車ミサイルなどは装甲で防ぐのではなく、機動力と流線形の装甲によって弾く被弾経始という考えが重視されていました。このため74式の外観は世代が近いドイツのレオバルト1やフランスのAMX-30と似ています。なお、トランスミッションと操向装置を一体化した、クロスドライブ式のコンパクトな変速走行装置を備えており、この装置を車体後方に搭載してエンジン直結としたことで、第2世代の砲塔式主力戦車で最も低い車高2.25mを実現しています。

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ドイツのレオパルト1戦車(柘植優介撮影)。

 エンジンは当初、1000馬力を念頭に置いていましたが、結局720馬力の空冷2サイクルV型10気筒ディーゼルエンジンを搭載しました。加速力に優れ、200m25秒というタイムを実現しています。

 これはアメリカの第3世代戦車であるM1エイブラムスの試作車XM1の29秒を上回り、レオバルト2A4の23.5秒に迫るものでした。 最高速度は53km/h。レオバルト1の65km/hには劣り、ソ連製T-62の50km/hはやや上回りました。

 加えて61式ではできなかった超信地旋回も可能としています。水密構造で潜水キットを装備すると、2mの潜水渡河も可能。この構造は毒ガスなどにも効果がありました。

 主砲はイギリス製の51口径105mmライフル砲を、日本製鋼所がライセンス生産したものです。車体が傾いても主砲の水平を保つ安定化装置を備えているほか、レーザー測距儀や弾道計算コンピューターなど、当時の最新技術が盛り込まれました。

 砲弾は当初、APDS(装弾筒付徹甲弾)とHEP(粘着榴弾)でした。現在はAPFSDS(93式105mm装弾筒付翼安定徹甲弾)とHEAT-MP(91式105mm多目的対戦車榴弾)となり、威力を向上させています。また、アクティブ近赤外線式暗視装置を備え、夜間射撃も可能としています。

 副兵装は砲塔左側に12.7mm重機関銃、主砲同軸に7.62mm機関銃を装備。試作車はリモコン操作でしたが、戦車の狭い視界からのリモコン射撃には無理があり、量産車では手動操作に戻されています。

スタック!? いいえ、74式戦車の持つ日本独自の技術です(写真)

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