南海が“最初につくったミニ支線”には何がある? 歴史は100年超 なぜ建設が急がれた?

南海本線から分岐する、わずか1.4kmの支線「高師浜線」は、100年以上の歴史を持ちます。なぜ建設され、また現在の沿線はどうなっているのでしょうか。

典雅な駅名「伽羅橋」の由来とは

 羽衣駅は特急以外が停車する主要駅です。JR阪和線(羽衣線)の東羽衣駅とも接続していますが、この羽衣線も1.7kmしかないミニ路線です。

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白砂青松の景勝地は過去のものに(安藤昌季撮影)。

 高師浜線は2番線の一部を切り欠いた3番線の専用ホームを発着します。配線上は本線との直通は可能ですが、運行は線内で完結しています。運行本数は毎時3~4本で、午前5時台から深夜0時台まで列車があり、利便性は確保されています。

 19時25分発の高師浜行きは、2000系の2両編成。30人ほどが乗っていました。2扉で車端部はボックスシート。座席数の多い電車です。

 出発するとしばらく直線を走った後、ゆったりと右にカーブします。直線になると伽羅橋駅に到着しました。1面1線の無人駅ですが、高架化工事でイチから作り直されており、多機能トイレも備わります。

 典雅な駅名ですが、由来は室町時代、芦田川に掛けられた紀州街道の橋です。この橋は後村上天皇に所縁がある大雄寺の門前にあり、材木に伽羅、つまり香木の沈香を使っていたといわれています。

 ちなみに高砂公園には、この木橋をかけ替えるため1865年に建設された石橋が保存され、登録有形文化財となっています。駅前には伽羅橋商店街もあり、駅入り口には古風な郵便ポストもありました。

 羽衣駅からの駅間距離は短いですが、伽羅橋駅で10人ほどが下車し、2人が乗車。出発すると、わずか2分で高師浜駅に到着です。1面1線の駅なので、到着した列車はそのまま折り返します。

 高師浜駅は開業時からの洋風建築の駅舎が非常にオシャレです。高架化工事中にリニューアルされ、多機能トイレとエレベーターが追加されて、現代の駅としての機能を備えました。

 駅舎の正面入口には、後鳥羽上皇の和歌「恋すてふ 名のみ高師の浜千鳥 なくなくかくる 袖のあだ浪」に登場する浜千鳥を題材としたステンドグラスのレプリカが設置されています。乗降人員1699人/日(2019)年と、それほど利用が多い駅ではありませんが、大切にされている路線と感じました。

 駅周辺はほぼ住宅地ですが、高石漁港もあり、海水浴場などもあったかつての海の町の名残を、少しだけ感じました。

多い?少ない? 南海支線の列車数(時刻表)

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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